自閉スペクトラム症で知的障害のある10歳の我が子はトイレでウンチをした後、私が気づいてトイレに来るまで待っています。その我が子が自分でお尻を拭けるように、自閉症療育の方法の1つであるTEACCHプログラムの理念を家庭生活にも取り入れてみました。今回はTEACCHプログラムについて調べたことなどを綴らせていただきます。
TEACCHプログラムとは?
TEACCHとは、Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Childrenの略で、「自閉症及びコミュニケーションに障害のある子ども達への支援と教育」の意味です。
1960年代よりアメリカのノースカロライナ州立大学を中心とした機関で、自閉症の方とその家族や関係者(教師やグループホームなどの支援者、雇用主など)、自閉症の支援者を目指す専門家を対象としたTEACCHプログラムが研究・開発されてきました。
TEACCHプログラムには次の9つの基本理念があります。
TEACCHプログラムの基本理念
- 観察から自閉症の特性を理解する
- 保護者と専門家の協力関係を重視する
- 治癒ではなく、子どもが自分らしく地域の中で生きていけることがゴール
…子どもが置かれている環境を子どもに合わせて変えることで、子どもがコミュニティの中で生きていけるようにする。 - それぞれの子どもによって正確に診断し、個別化した支援する
- 構造化された指導法を利用する
…言葉による指示が苦手、予測のつかない行動が苦手、指示を覚えておくことが苦手などの特性を持つ子どもに対して、その子どもが生活しやすいように構造化された環境を作る - 認知理論と行動理論を重視する
…例えば犬を異常に怖がる自閉症児は「犬」が「怖い」と間違って学習してしまったため「逃げよう」と行動してします。「全ての犬が怖い」と認知してしまったその認知の歪みを無くせるように言葉をかけたり、「逃げよう」としたときに「本当に怖いのか遠くから観察してみる」ことで、「怖くない犬もいるんだ」と新たに学習をさせて、犬を怖がる行動の改善を図ることが出来ます。 - 達成可能な課題を設定してスキルを伸ばすとともに、弱点を受け入れる
…聴覚過敏の特性のある子どもにイヤーマフを着けることで、本人の苦手な音を防ぐことが出来ます。 - ジェネラリストの視点を重視する
…小児科医、教師、言語療法士、作業療法士、栄養士などの様々な専門家が子どもの全体像を把握して支援することが大切です。 - 生涯にわたって地域に根差した支援をする
特別支援学校で採用されているTEACCHプログラム
TEACCHプログラムのことを調べているうちに、我が子が通っている特別支援学校の学校運営にTEACCHプログラムがあらゆる場面で採用されていることに気づきました。
環境が構造化されている
生活環境の構造化
学校に登校すると、子ども達は鞄から水筒を出して所定のカゴに置いて、紐付きタオルをフックにかけて、連絡帳を提出し、給食袋を自分の棚のカゴに置いて、構内着に着替えて、鞄を自分の棚にしまいます。我が子は家では私が声を掛けないとできないことが多いのに、学校では一人で出来るようになったそうです。
スケジュールの視覚支援
特別支援学校では、その日のスケジュールが確認できるようにスケジュールボードが設置されています。お友達と区別ができるように顔写真が貼られていて、その日のスケジュールや給食の献立、放課後等デイサービスの利用の有無、下校バスの利用の有無などのスケジュールが掲示されています。
また、遠足に行く日、歯科検診の日、近隣の学校との交流の日など通常とは異なるスケジュールの日には、その日の行動についてイラストや写真の入った資料で事前に説明をしてくださっています。
個別学習に集中できる空間設定
国算の個別学習を行う時、それぞれの生徒の机の横にキャスターのある棚が置かれ、子どもがそれぞれのコーナーで集中して課題に取り組めるような環境作りがされています。棚は5段くらいあって、それぞれの棚にその日の課題が準備されています。子どもは上の段から順番に課題に取り組むことが出来ます。
個別化されている
特別支援学校では、それぞれの子どもの発達に応じた個別指導計画が作成されています。
家庭との連携が取れている
子どもが持ち帰ってくる連絡帳にその日の学校での取り組みや我が子の様子がしっかりと記載されています。また、少々大変ではありますが、親も毎日、家庭での様子も連絡帳に記します。それによって、家庭と学校が子どもの現在の様子や課題を共有することが出来ています。
特別支援学校に入るまでは「この子は私が責任を持って育てなくては!」と思っていましたが、学校に入ってからは「家庭と学校、協力して子どもを育てていきましょう」と先生方が言ってくださるので、学校は私の心の支えになっています。
生涯に渡って地域で生きていけるように支援してくださっている
我が子が通っている特別支援学校は子ども達の地域での活動も支援してくださっていて、通所している放課後等デイサービスを訪問して子どもの様子を観察してくださったり、放課後等デイサービスの職員の方々と合同で支援方法に関する研修会を実施したりしてくださっています。
また、卒業後の就労を見据えて就労に関する保護者向け説明会を催してくださったり、福祉施設や就労先の企業の方との意見交換会なども実施してくださっているようです。
家庭でも出来るところから取り入れてみようと思いました
TEACCHプログラムのことを調べているうちに、我が子が通っている特別支援学校では構造化や個別化などのTEACCHプログラムの基本理念が学校運営にしっかりと取り入れられていることに気づきました。我が子は学校で出来るようになったことが沢山あり、適切な支援が大切だと感じました。
それで、家庭で我が子と私が現在困っていることは無いかと考えてみて、トイレの問題をまず何とかしてみようと思いました。
我が子がトイレでウンチをした時の現状
我が子はトイレに行きたいときには一人でトイレに行きます。おしっこは問題ありません。
問題はウンチをした後です。我が子は自分で拭こうとしなくて、私が気づくまでトイレで座って待っています。私が気づいて声を掛けてティッシュを渡すと、自分で拭くことが出来ます。
まだ自分で拭く自信が無いのかなと感じます。あと、自分で拭く認識が弱いのと、ティッシュを適切な長さで破ることがまだ上手にできないようです。
我が家のトイレにTEACCHを取り入れてみました
これまではその都度、お尻を拭くように声を掛けて支援してきましたが、自分一人でお尻を拭けるようになるように、TEACCHの構造化を我が家のトイレにも取り入れてみました。
トイレにイラストを貼って1か月後(追記)
なんと!トイレにイラストを貼ってから1か月後、我が子はウンチをした後に自分でトイレットペーパーをちぎって丸めて、お尻を拭けるようになっていました。
トイレをした後に私が様子を見にいかなくても、我が子はお尻を自分で拭いて、水を流して、トイレから出て来ました。
まとめ
TEACCHプログラムは生涯に渡った支援なので、自閉症の障害者の方が働く施設やグループホーム等でもスケジュールや作業手順の構造化や視覚支援ツールなど、TEACCHの基本理念が取り入れられているようです。前に見学させていただいた就労継続支援B型施設でもそういった支援が行われている様子を見せていただきました。
我が家でもトイレでの動作を分かりやすくイラストで表した視覚支援ツールを設置してみたところ、約1カ月で効果が表れ、我が子はウンチをした後に1人でお尻を拭いてトイレから出てこられるようになりました。
これまで何度も言葉で「ウンチをした後はトイレットペーパーでお尻を拭く」ことを教えてもなかなか出来なかったのですが、イラストで伝えたら本人が行動に移せるようになったので、これからも視覚支援ツールを様々な場面で活用していきたいと思います。
読んでくださり有難うございました。