私は介護について全くの素人なのですが、現在、介護福祉士実務者研修を受講しています。今回は私が知っておいた方が良いと思う介護保険制度についてと、研修を機に出会った介護漫画『ヘルプマン』の感想について綴らせていただきます。
介護保険制度について
保険者と被保険者
保険者
介護保険の保険者は市町村及び特別区です。
被保険者
全ての40歳以上の人に対して介護保険の加入が義務付けられています。介護保険の被保険者は第1号被保険者と第2号被保険者の2種類に分かれています。
- 第1号被保険者
65歳以上で市町村の区域内に住所がある人 - 第2号被保険者
40歳以上65歳未満で市町村の区域内に住所があり、医療保険に加入している人
被保険者の義務(保険料納付)
満40歳になった月から第2号被保険者となり、介護保険料は健康保険料と一緒に給与から天引きされます。保険料は加入している医療保険(国保や職場の健康保険)の算定方法により異なります。
65歳以上になると第1号被保険者となり、介護保険料は年金等から天引きされます。第1号被保険者の保険料基準額・保険料率は、3年毎に保険者が決定することになっています。詳細は厚生労働省のホームページをご覧ください。
保険給付の対象者
保険給付を利用するためには、要介護状態・要支援状態にあると認定される必要があります。そして、要介護状態は5つの区分、要支援状態は2つの区分が設けられています。
区分 | 状態(おおまかな目安) |
要支援1 | 家事や身支度等の日常生活に介護は必要ないものの支援が必要であり、介護予防給付を利用すれば心身の機能の改善が見込まれる。 |
要支援2 | 家事や身支度等の日常生活に介護は必要ないものの支援が必要であり、介護予防給付を利用すれば心身の機能の改善が見込まれる。要支援1より少し状態は重い。 |
要介護1 | 立ち上がりや歩行が不安定。排泄や入浴などに部分的な介助が必要な状態。 |
要介護2 | 立ち上がりや歩行などが自力では困難。排泄・入浴などに一部または全面的な介助が必要な状態。 |
要介護3 | 立ち上がりや歩行などが自力では出来ない。排泄・入浴・衣服の着脱など全面的な介助が必要な状態。 |
要介護4 | 日常生活の上での能力の低下が見られ、排泄・入浴・衣服の着脱など全般に全面的な介助が必要な状態。 |
要介護5 | 日常生活全般について全面的な介助が必要な状態。意思の伝達も困難となる状態を含む。 |
また、40歳以上65歳未満の第2号被保険者の場合は、16種類の特定疾病にある場合には保険給付の対象となります。
保険給付までの流れ
要介護認定等の流れ
- 申請
被保険者が保険者の担当部署で申請します。申請は家族や居宅介護支援事業者、地域包括支援センターが代行することも可能です。 - 市町村による認定調査・主治医意見書
申請が受理されると市町村の担当者が自宅や入院先に訪問し、認定調査が行われます。認定調査では74項目についての基本調査がされます。また、認定においては主治医意見書も必要です。主治医がいない場合には、市町村が指定する医師の診察を受ける必要があります。 - 一次判定
74項目の基本調査の結果をもとに、コンピューターによる一次判定が行われます。その際、主治医意見書の整合性のチェックもあります。 - 二次判定
一次判定結果をもとに、介護認定審査会で二次判定が行われます。その際、要介護認定等の有効期間を設定します。 - 認定と通知
介護認定審査会での審査・判定結果を受け、市町村は認定あるいは不認定を決定し、認定結果を申請を行った被保険者に文書で通知します。認定は申請日から原則30日以内で行われることになっており、認定の有効期限は申請日にさかのぼって設定されます。 - 更新・区分変更など
保険給付を継続的に利用するときには、有効期限の終了前に要介護認定等の更新の申請をする必要があります。また、要介護認定等の有効期間中に状態の変化があった場合、被保険者等が要介護認定等の区分を変更するための申請を行うことが出来ます。
ケアマネジメントの流れ
要介護や要支援の認定がされたら、ケアプランを作成して、そのプランに応じた介護サービスを契約して利用できるようになります。
居宅サービスを利用するとき
ケアプランは利用者が自分で作成することが可能です。また要介護1〜5の場合には、居宅介護支援事業者(作成するのはケアマネジャー)に、要支援1〜2の場合には地域包括支援センターに依頼することが出来ます。
施設サービスを利用するとき
直接、介護保険施設に連絡を取り、入所のための相談を行います。入所時に施設のケアマネジャーが作成します。
保険給付の種類
居宅介護で利用できるサービス
在宅で利用できるサービス
- 訪問介護(ホームヘルプサービス)
介護福祉士や訪問介護員が利用者の居宅を訪問し、身体介護や生活援助(掃除や洗濯、調理などの家事援助)、通院などの乗車降車の介助をします。 - 訪問入浴介護
- 訪問看護
看護師などが利用者の居宅を訪問して病状の観察などを行います。(医師の指示が必要です。) - 訪問リハビリテーション
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者の居宅を訪問し、機能訓練を行います。 - 居宅療養管理指導
利用者の通院などが困難な場合に、医師や薬剤師などの専門職が居宅を訪問して療養上の指導・助言を行います。
施設で利用できるサービス
- 通所介護(デイサービス)
日帰りの施設などで、日中の時間帯に入浴や食事などの介助や機能訓練を行います。 - 通所リハビリテーション
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
特別養護老人ホームや老人短期入所施設などに短期的に入所します。 - 短期入所療養介護(ショートステイ)
利用者が医療的依存度が高い場合やリハビリテーションが必要な場合に、介護老人保健施設や介護医療院、病院(療養病床)などに短期的に入所します。
生活環境を整えるサービス
- 福祉用具貸与
ベッドや車いす、特殊寝台、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえなどの福祉用具が必要な場合、貸与が受けられます。 - 特定福祉用具販売
腰掛便座や入浴補助用具(入浴用いす、浴室内すのこ等)など貸与になじまない福祉用具は特定福祉用具として購入費用を保険給付の対象としています。 - 住宅改修
要介護状態等により必要になった自宅などの改修工事費用は、保険者に事前申請の手続きをすることによって、一定の限度額内(20万円)において、かかった費用の9割(1割負担の場合)が介護保険の給付費として保険者から償還されます。一定以上の所得がある人の利用者負担は、2割(保険給付16万円)または3割(保険給付14万円)です。住宅改修の工事の種類等詳細については、厚生労働省のホームページにてご確認ください。保険給付の対象となる住宅改修費の上限は一人あたり20万円で、要支援1〜要介護5までの人が対象になります。10万円の工事を2回行うことも出来ます。20万円を使い切ればおしまいですが、要介護・要支援状態の区分が3段階以上上がった場合にはリセットされ、再度保険給付の対象になります(3段階リセット)。また、転居した場合にもリセットされます。
施設入所して受けられるサービス
- 介護老人福祉施設
介護を中心とした長期入所の生活施設です。老人福祉法にもとづいて設置される特別養護老人ホームが介護保険法による指定を受けることで運営を行います。特別養護老人ホームには要介護3以上の認定を受けた人しか入居できません。 - 介護老人保健施設
病状が安定した後、療養上の管理、看護、医学的管理下でのリハビリテーションや介護や機能訓練などが提供される施設です。 - 介護医療院
日常的な医学的管理が必要な重度要介護の方に、医療、看護、ターミナルケア、看取りなどを行う施設です。
地域密着型サービス
- 定期巡回・随時対応型訪問看護介護
- 夜間対応型訪問介護
- 地域密着型通所介護(小規模デイサービス)
通所介護のうち、1日あたりの利用定員が18人以下のものは地域密着型サービスに位置付けられています。 - 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
登録定員を29人以下に限定し、家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、訪問・通所・短期入所の3つのサービスを利用者に合わせて適宜組み合わせ、在宅生活の支援を行うものです。 - 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症高齢者のための共同生活住居において、必要な介護サービスを提供するものです。入居定員は5人以上9人以下とされており、利用者の家族や地域住民との交流が出来るように、住宅地に設置されることが基本とされています。 - 看護小規模多機能居宅介護(複合型サービス)
訪問介護と小規模多機能型居宅介護を組み合わせたサービスを提供する施設です。
利用者負担額
介護保険制度のサービスを利用した際には、サービス費用の総額の費用の1割を自己負担し、残りの9割は介護保険から給付されます。(一定以上の所得のある第1号被保険者については、自己負担が2割もしくは3割になります。)
ただし、次のものは保険給付の対象とならず全額が利用者負担になります。
- 食費(施設サービス・短期入所サービス・通所サービス)
- 施設入所時の居住費・短期入所時の滞在費
- 特定施設やグループホームでの家賃・管理費など
- 日常生活費・特別なサービスの費用(教養娯楽費、グループホームや特定施設・通所サービスでのおむつ代など)
- 訪問・通所サービスの際の「通常の営業地域外」でのサービス利用時の交通費(通常の営業地域内の場合の交通費は介護報酬に含まれる)
また、居宅サービスを利用する際には、要介護状態区分別に、介護保険から給付される上限額(支給限度額)が決められており、上限を超えてサービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担となります。支給限度基準額については、各自治体のホームページにてご確認ください。
※住宅改修、福祉用具購入、居宅療養管理指導等は区分支給限度基準額に含まれません。
介護漫画『ヘルプマン』について
介護の勉強を始めてから、介護保険制度のことや介護技術、認知症の症状などについては少し知識がつきましたが、実際の介護については全く想像がつきませんでした。
しかし、私が介護福祉士実務者研修の実技講習を受けている施設で『ヘルプマン』という漫画に出会いました。ベテラン介護福祉士でケアマネジャーも取得している講師の先生が「この本は本当にリアルに描かれている!」と推薦してくださったので、私も『ヘルプマン』を読み始めました。(私が住んでいる自治体の図書館には『ヘルプマン』が置いてありました。)
『ヘルプマン』を読んで、認知症になるってどういう状態になるのか、家族が認知症になった時にどんな対応を取ったら良いのか、介護福祉士さんってどんな仕事をしているのか、ケアマネジャーってどんな仕事をしているのか、介護業界ってどうなっているのか…など、誰にとっても避けられない老いや介護のことを沢山知ることが出来ました。すごく勉強になって為になるので、多くの方に読んでいただきたいと思いました。
まとめ
介護福祉士実務者研修を受けて介護保険制度について勉強し、将来的に役立つ知識を沢山得ることが出来ました。親や夫、そして自分もいつかは老いていくので、介護保険制度にはどんなサービスがあるのかだけでも知っておけば、いつか必ず役に立つと思います。
それから、私は『ヘルプマン』を読んだり、実務者研修で実際に介護のお仕事をされている方々のお話を伺って、介護の様子をイメージできるようになりました。介護は全く知識の無い状態で出来るものでは無いと思います。子育てをするときに育児書を読んだりするように、介護をするときにも介護に関する本などをを一通り読まないと絶対にできないと思いました。
私は我が子のおむつや保育園児のおむつを替えて来ました。相手は幼児です。しかし、介護となると相手は大人です。介護は相手の気持ちを読み取る想像力を要すると思います。
自分もいつかおむつをする日が来る。それもまた人生勉強なのでしょう。
読んでくださり有難うございました。