オランダ大航海時代の歴史と5年に1度開催されるSAIL Amsterdamについて

今回はオランダ大航海時代の歴史と、その歴史を現代にも感じることが出来るイベント「SAIL Amsterdam」についてご紹介させていただきます。

17世紀、オランダ大航海時代について

オランダ、スペインから独立

16世紀、ネーデルラント北部7州の民族はゲルマン系で言語はドイツ語系、宗教は主にカルヴァン派で海運と商業が盛んでした。南部10州の民族はラテン系で言語はフランス語系、宗教は主にカトリック、農牧業と毛織物工業が盛んでした。ネーデルラントはスペイン=ハプスブルク家によって支配されており、スペイン王フェリペ2世(在位1556~98)の対ネーデルラント政策はカルバン派教徒の弾圧、自治権の抑制、重税を課していました。それに反発してオランダ独立戦争が起き、1579年にネーデルラント北部7州はユトレヒト同盟を結成し、1581年にオラニエ公ウィレムを総督としてネーデルラント連邦共和国を宣言しました。

みどり
ネーデルラントの歴史についてはベルギーのブリュッセルの記事にも掲載させていただいているので、宜しければご覧ください。

東インド会社設立、ポルトガルに代わって香辛料貿易

1492年にスペインのカスティリャ王国女王イサベルの支援を受けたコロンブスがアメリカ大陸を発見し、1498年にはポルトガル人のヴァスコ=ダ=ガマがインド航路発見したことにより、15世紀はスペインとポルトガルが海上貿易の覇権を握っていました。

1580年から1640年まで、ポルトガルはスペインに併合されました。1588年にイギリスのエリザベス1世によりスペインの無敵艦隊(アルマダ)が撃破されると、その後スペインは海上権を喪失し、衰退していきました。

みどり
ロンドンの旅行記でもイギリスの歴史に触れているので、宜しければご覧ください。

スペインの衰退の機会を見て、1602年にオランダは東インド会社を設立し、1602年にオランダは現在のインドネシアのジャカルタにバタヴィア(植民地)を建設しました。また、1621年には西インド会社を設立し、1624年には台湾を領有し、1626年には現在のアメリカのニューヨークにニューアムステルダムを建設し、1652年には現在の南アフリカにケープ植民地を建設しました。

この頃がオランダの黄金時代で、アムステルダムは世界金融の中心となっていました。

1634年に長崎に造られた人工島、出島。ポルトガルとの貿易に代わって1641年からオランダとの貿易が行われました。
Dutch Ships in a Calm Sea,1665,アムステルダム国立美術館

イギリス=オランダ戦争に敗北、海上覇権の喪失

1651年、イギリスはイギリスとその植民地からオランダ船を締め出して自国の海運業の発展を図るための「航海法」を制定しました。それにオランダが反発し、1652年から1674年までイギリス=オランダ戦争が起こりました。この戦争でイギリスはオランダを破り、オランダは覇権を喪失し、イギリスがオランダに代わって世界の貿易市場を率いるようになりました。1664年、ニューアムステルダムイギリス領ニューヨークになりました。

The Battle of Terheide,1653-1666,アムステルダム国立美術館
みどり
16世紀はスペインとポルトガル、17世紀はオランダ、18世紀はイギリスの時代だったのですね。

大航海時代を感じることが出来るイベント、「SAIL Amsterdam」

ここからは大航海時代を感じることが出来る、オランダのイベント「SAIL Amsterdam」についてご紹介させていただきます。

「SAIL Amsterdam」は5年に1回アムステルダムで開催されるイベントで、世界中から名だたる大型の帆船など数十万隻の船がアムステルダムに集まります。1975年にアムステルダム設立700年を記念のお祝いとして初めて開催されました。私は2015年のSAIL Amsterdamに参加することが出来ました。2020年は新型コロナ感染症の感染拡大によって中止になったようです。次回は2025年の開催が予定されています。

アムステルダム中央駅から会場まで歩いて行きました。(徒歩10分)多くの人が集まっていて、すごい熱気でした。
アイ湾の会場を目指して、アムステルダムの街中の運河を辿って普通のボートも集まって来ていました。
ボートに乗った人たちはお酒を飲んだりしてノリノリで、とても楽しそうでした。
会場には古そうな大きな帆船が沢山停泊していました。
オランダ、アメリカ、イギリス、エクアドル、オーストラリア、スウェーデン、チェコ、ドイツ、フランス、ポーランド、ロシア等から帆船が来航していました。
夜には灯りがともされていて、とても綺麗でした。
5年に1度しかないイベントで、世界中から帆船が集まってくるので、みんなワクワクして待っていたのでしょうね!
1800年代に造られた船も停泊していました。帆船ってところがロマンを感じますよね。
夜景も楽しめました。
最後に花火が上がっていました。
みどり
SAIL Amsterdamは一大イベントで、大きな帆船を見たり、ボートに乗って楽しそうにはしゃいでいる方々の姿を見たりできて、とても楽しかったです。オランダ人にとって船はとても身近なものですね。
アムステルダムの運河では「ハウスボート」(居住型の船)もよく見かけました。オランダ全土で約1万世帯もハウスボートに住んでいるそうです。

オランダ海洋博物館

大航海時代について学べる博物館、「オランダ海洋博物館」もお勧めです。オランダ海洋博物館の建物は、17世紀に建てられたもので、1973年までオランダ海軍の施設として使用されていました。大航海時代の船の模型の展示や海洋史についての解説があります。東インド会社の帆船の復元船にも乗ることが出来るので、子ども楽しめます。

オランダ海洋博物館はすごく広くて、幼児だった我が子も展示を楽しんでいました。復元船に乗ると、大航海時代の船員の生活を想像することが出来て面白かったです。

まとめ

SAIL Amsterdamの会場には古い大きな帆船が沢山停泊していて、アメリカやオーストラリアなどの遠くの国々から遥々やって来たのだと思うと興奮しました。小さなボートに乗っている人々もとても楽しそうで、イベントの一体感がとても素敵でした。

オランダ人はイベントの時に一致団結してお祭り騒ぎをするのが大好きな国民であるようです。毎年、国王の誕生日にはオレンジ色の服を着て街に繰り出していて、日本人の私もとても楽しかったです。

SAIL Amsterdamを通して、17世紀の大航海時代の歴史をオランダ人が誇りに思っていることが分かりました。私は日本人なので、その頃徳川家康が日本を逆に鎖国して、日本を守ってくれていた歴史に誇りを持っています。そして、その頃の日本がオランダを唯一の交易相手にしていたという判断も素晴らしいと思っています。

国際法の父と呼ばれているグロティウスが『戦争と平和の法』を出版したのも17世紀初頭です。17世紀以降、欧州と新大陸が繋がって、国と国の接点が増えて戦争が大規模になっていくその後の歴史を鑑みると、17世紀の初頭にオランダ人のグロティウスが国際法を初めて提唱したということに感慨深く感じます。

2025年のSAIL Amsterdamは無事に開催されていると良いなと願っています。

読んでくださり有難うございました。

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