私は介護の仕事は未経験ですが、現在介護福祉士実務者研修を受講しています。今回は、先日医療的ケアの研修を受講したので、そのことについて綴らせていただきます。
医療的ケアと法の改正、介護福祉士実務者研修
医療的ケアと法の改正
医療的ケアとされている喀痰吸引及び経管栄養は原則として医行為とされています。これまでは医師法や保健師助産師看護師法によって免許の持たない者が医行為を行うことは禁止されていました。このため、免許を持っていない介護福祉士や介護職等が医行為である喀痰吸引や経管栄養を行うことは法的に禁じられていました。
しかし、高齢化などの社会的背景から介護福祉士や介護職等が喀痰吸引や経管栄養を行う必要性が生じ、2011年(平成23年)の社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、介護福祉士の定義を規定している第2条第2項が次のように改正されました。
社会福祉士及び介護福祉士法 第2条2項
この法律において「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。
介護福祉士実務者研修
2007年(平成19年)の社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、介護福祉士国家試験の受験資格が改正され、2016年(平成28年)年度国家試験から、3年以上の実務経験に加え、6か月以上の実務者研修の受講が必要となりました。実務者研修(450時間)には医療的ケア(講義50時間+各行為のシミュレーター演習)が含まれています。
介護福祉士が医療的ケアを業として行うのに必要な条件
条件①「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受ける
介護福祉士が医療的ケアを行うには、都道府県知事等が行う「喀痰吸引等研修」を修了し、都道府県に登録して「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受ける必要があります。「認定特定行為業務従事者認定証」は研修の区分に応じて、第1号、第2号、第3号の3種類があります。
第1号研修修了者は不特定多数の者に対する喀痰吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)の全ての行為が可能となります。第2号研修修了者は、対象となった行為のうち、任意の行為について実地研修を修了した場合、個別に認定等低抗議業務従事者認定証の交付を受けられます。第3号研修修了者は、特定の者が必要とする行為に限られます。
研修内容
研修内容については、厚生労働省のWebサイトに掲載されています。研修内容は大きく分けると1.基本研修と2.実地研修の2つの研修があります。さらに基本研修は①50時間の講義と②各行為のシミュレーター演習に分けられます。
条件②医療的ケアを業として実施する事業者の登録
医行為を実施する事業者は事業者ごとに都道府県知事の登録が必要です。登録には、医療関係者との連携についての基準や喀痰吸引等を安全・適正に実施するための基準の要件を満たす必要があります。
条件③医師の指示
介護福祉士が医療的ケアを行うには、医師の文書による指示が必要です。
私が介護福祉士実務者研修の医療的ケアを受けた感想
上述しましたが、介護福祉士実務者研修の医療的ケアの内容は、厚生労働省が提示している喀痰吸引等研修の基本研修の内容と同じです。そのため、実務者研修の医療的ケアを修了すれば、喀痰吸引等研修の基本研修(50時間の講義+各行為のシミュレーター演習)は履修免除になります。
50時間の講義
私はカイゴジョブアカデミーの介護福祉士実務者研修を受講しました。カイゴジョブアカデミーの介護福祉士実務者研修には課題をEラーニングで提出できる通信課程講座があります。
医療的ケアの50時間の講義はテキストを読んで学習して、その後にEラーニングで選択式の問題を解くこととで学習することが出来ました。問題は5択から正しい答えを1つ選択するような形式で、8割以上正解出来れば合格することが出来ました。医療的ケアの問題は60問ありました。
各行為のシミュレーター演習
通信課題に合格した後、スクーリングでの実習が始まりました。スクーリングでの実習は介護課程の講義や演習が6回あり、その後に医療的ケアが2回(2日間、9時20分から17時40分)ありました。講師はベテラン看護師さんでした。
医療的ケア1日目、救急蘇生法と経管栄養のシミュレーター演習
医療的ケアの1日目には救急蘇生法と経管栄養の講義と演習がありました。救急蘇生法の演習は1回だけでした。救急蘇生法は心肺蘇生とAED(自動体外式除細動器)を人形を使って演習しました。
医療的ケア2日目、喀痰吸引のシミュレーター演習
まとめ
介護福祉士実務者研修の医療的ケアの演習を受けるまで、うまく出来るかとても心配でした。しかし、看護師の講師の方が教えるのがとても上手で、1日中何度も演習していくうちに流れを覚えてスムーズに出来るようになりました。
しかし、経鼻経管栄養のチューブが抜けていたりすると命に関わる重大な事故に繋がってしまうので、介護福祉士が医療的ケアを行う際には、チューブが胃の中にしっかりと入っているかを確認したかを医師や看護師に聞いてから行うようにと何度も何度も言われました。それが自分を守るためだと教えてくださいました。看護師さんも現場でヒヤリとしたことがあると言っていました。やっぱり命に関わることをするのは大変だなと思いました。
介護福祉士実務者研修の医療的ケアは人形相手に行うので、相手が人間であれば益々緊張すると思いました。しかし、介護福祉士による医療的ケアを必要としている方々が沢山いるから制度化されたものなので、介護福祉士もこの業務を責任を持って携わっていく必要があります。介護福祉士の仕事って本当に難しいと思いました。
講師の60代のベテラン看護師さんは「今日の頑張りが明日を作る」というようなことをおっしゃってから、講義をしてくださいました。医療的ケアをしたことのない私でしたが、実務者研修を受けることで医療的ケアの流れを覚え、医療器具を正しく使い、必要な言葉をかけられるようになりました。1つ出来ることが増えたことは、素晴らしいことだと思います。
医療的ケアの勉強をして、医療的ケアを受ける方や家族の方は本当に大変なんだと知ることも出来ました。演習では胃ろうや経鼻経管栄養をする際には1秒1滴で栄養剤が胃の中に入るように設定したので、1回の経管栄養に2時間かかりました。1日3食の3回の経管栄養で経過観察の時間も含めて7時間半も食事のためにベッドで安静にしていなければならないということを知り、経管栄養を受ける人も実施して見守る家族も本当に大変なんだと実感しました。
新しいことを学び知らなかったことに気づけたので、介護福祉士実務者研修を受講して本当に良かったと思いました。
読んでくださり有難うございました。