【同一労働同一賃金】障害児の母が正社員になるのは難しい。

私は現在、障害者の就労継続支援施設でパート勤務しています。パートで働くのはとても楽しいし、子どもの体調が悪い時などにも休みを取りやすいので満足しています。

しかし時々、職場のフルタイム正社員さんのワーママさんが眩しく羨ましく感じてしまいます。

障害児者の母がフルタイム正社員になるのは難しい

障害児や障害者の母親がフルタイム正社員になるのは難しいです。その理由は次のものが挙げられます。

子どもの入院、通院などが健常児より多い

私の子どもも手術して入院したことがあるのですが、障害児は健常児よりも入院や通院が必要になる子どもが多いです。発達検査を受けに行ったり、投薬が必要な場合には薬を定期的に処方していただかなければならないので、定期的に通院をしている障害児は多いと思います。

最近は医療的ケア児が増えていて、直近約10年で2倍の2万人になっています。医療的ケアなどの特別なケアが必要な子どもの場合、幼稚園や保育園の入園を断らることが多く、結局主に母親がずっと傍でケアしなければならず、正社員になることは難しいです。

療育にも連れていきたいからフルタイム勤務は難しい

子どもに障害がある場合、療育に通わせることによって発達を促すことが出来ると言われています。

私も子どもが幼児の頃は、週に1〜3回、子どもに療育を受けさせていました。その付き添いに午前や午後の3時間程を要していたので、フルタイム勤務は難しかったと思います。

保育園や幼稚園の入園を断られる

子どもに障害がある場合、保育園や幼稚園の入園を断られることが多いです。そのため、子どもを預かってもらえる施設が見つからず、結局主に母親がずっと傍で子どもを見守り育てることになります。

夏休み問題が深刻

子どもが就学した後は放課後等デイサービスも使えるので、幼児の頃に比べると母親が自由に使える時間が増えてきます。

しかし、夏休みや春休み冬休みの長期休暇中はなかなか働けません。放課後等デイサービスの預かりもあるのですが、学童のように朝から夕方までずっと預かってくれる施設はあまりありません。(我が子が通っている放課後等デイサービスは長期休暇中は11時前にお迎えに来てくださって、17時過ぎに帰ってきます。新型コロナの緊急事態宣言が出ていた頃は午後14時から17時の預かり時間でした。)

長期休暇でなくても、我が子は放課後等デイサービスから17時過ぎに帰宅するので、フルタイム勤務は難しいです。

障害児は高等部卒業後、すぐに社会人になる

文部科学省の調査によると、2021年度の大学進学率は54.9%、短期大学と専門学校を含む高等教育機関への進学率は83.8%です。

健常の人の8割以上が高等学校を卒業した後数年経ってから社会人になりますが、障害児の場合は高等部を卒業した後すぐに就労します。

障害児が高等部に通っている頃には、主に母親が就労施設を探したり見学したり面談したり、職場体験に付き添ったりしなければなりません。また、子どもが福祉的就労した場合、大体16時過ぎには帰宅するので、母親がフルタイム勤務することは難しいです。

みどり
障害児の卒業後の進路についての記事も宜しければご覧ください。

正社員ワーママさんが羨ましく感じる理由

障害児の母親がフルタイム正社員になるのは難しい理由を述べてきましたが、ここからは正社員ワーママさんが羨ましいと感じる理由を綴らせていただきます。

責任ある仕事をしている姿が眩しい

責任ある仕事をしているということは、その分大変なことも多いと分かっているのです。時には家庭を犠牲にして日々時間に追われながら働いてきたのだと分かっています。

その分、責任ある仕事をしている姿が格好良く、眩しく見えます。辞めずに続けてきた勤続年数に完敗する思いです。時間だけは取り返せないことを痛感します。

お給料がパートよりも正社員の方が圧倒的に良い

私はパートで毎日6時間働いていて、正社員さんは8時間働いています。私のお給料が正社員さんの3/4だったら良いのに、全くそうではありません。また、昇給に関しては正社員さんの方が昇給の機会が多いと思います。パートの場合、勤続年数や資格の有無によって昇給される場合がありますが、時給が大幅に上がることは少ないと思います。

働き方改革関連法施行によってパートにも賞与も出るようになった

2018年7月6日、「働き方改革関連法」が公布されました。「働き方改革関連法」では①時間外労働の上限規制、②勤務間インターバル制度の導入促進、③年次有給休暇の確実な取得、④労働時間状況の客観的な把握、⑤フレックスタイム制の拡充、⑥高度プロフェッショナル制度の導入、⑦月60時間超残業に対する割増賃金率上げ、⑧雇用形態に関わらない公正な待遇の確保が定められています。

⑧雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(いわゆる同一労働・同一賃金)については、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から施行されています。この法律により、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の均衡・均等待遇が定められました。

①正規雇用労働者と、非正規雇用労働者の職務内容、職務内容・配置の変更範囲が同じ場合の差別的取扱いの禁止(パートタイム・有期雇用労働法9条)=均等待遇
②正規雇用労働者と、非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を禁止
(パートタイム・有期雇用労働法8条など)=均衡待遇
(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。
(不合理な待遇の禁止)
第八条
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
みどり
パートにも賞与が出るようになって嬉しいです。『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の第8条に規定されているので、正社員とパートの働き方において責任の程度が違う場合には基本給、賞与に相違があっても仕方ないですね。ちなみに、私の今年の夏のボーナスは毎月の平均給与×0.6カ月分くらいでした。昨年、会計年度任用職員(公務員パート)をしていた時の夏のボーナスは基本給×1.15か月分だったので、公務員はやっぱり賞与が高いなぁと思いました。いずれにせよ、毎月の基本給に大きく左右されるので、パートの時給が上がらないと賞与も少ないままです。

残業が少なく定時でほぼ帰れる正社員さんもいる。時短正社員もいる。

私が昔新卒で入社した会社は残業が当時多かったです。しかし、今は働き方改革で残業が減り、定時で帰ることが推奨されているようです。また、当時から子育てのため時短で働いている正社員さんもいました。今はダイバーシティ推進のため、時短勤務や在宅勤務をしやすい環境がさらに整ってきているようです。

私が今働いている障害者の就労継続支援施設の正社員さんの残業時間は私が新卒の頃に働いていた会社よりは少なそうですが、定時で帰れる日は少なそうです。子育てとの両立で1分1秒を争う正社員ワーママさんにとっては1時間の残業でも辛いだろうと思います。

みどり
公務員パートしている時は、公務員の正社員(教員)が3年育休を取っているのが最強だと感じました。民間でも気持ちよく3年取得出来たらいいのに。

オランダみたいにパートと正社員の格差が少なかったらいいのに。

結局、障害児の母親が正社員になることは難しいってことは事実です。フルタイム勤務している障害児の母親は5%しかいないようです。

障害児の母親でなくても、日本だと一度正社員の立場を手放すと再び正社員になるのはとても難しいです。

私が昔正社員を辞めた時、夫は単身赴任していて週末婚でした。夫の海外勤務に帯同した時期もありました。結局、私が正社員で働き続けるのはどうしても無理だった期間があり、それは障害のある子どもがいたからではありません。

オランダはパートタイム労働者と正社員の賃金差が少ない

オランダでは1982年に「ワッセナー合意」が締結されました。その合意によって、労働者全員の労働時間を縮小し(ワークシェアリング)、雇用の再分配をするためパートタイム雇用の促進が提案されました。

質の高いパートタイム雇用を育てる必要性についての新たなコンセンサスにより、1990年、FNVはフルタイム雇用を基準とする方針を廃止した。いくつかの法改正が行われ、例えばパートタイム従業員も失業給付金を受給できるようになるなど、パートタイム従業員の立場が強化された。93年には、政府が正規の週労働時間の3分の1以下の従業員を法定最低賃金の適用外とすることを定めた法令を廃止。96年には、パートタイム労働者に賃金、残業手当、ボーナス、職業訓練などについて、フルタイム就労者と均等な待遇を受ける権利が与えられる。さらに、1990年と2001年の税制改正で、短時間のパートタイム労働への就労を阻んでいた要因がいくつか取り除かれた2000年には、ついに労働時間法(WAA)が制定され、従業員が特定の状況下で、労働時間を自分で変更(減らすか増やす)する権利を手に入れる。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構のWebサイトより引用

オランダではパート労働は「非正規」ではなく、賃金、雇用の安定、社会保障などの面でフルタイム雇用と均等な待遇の「正規」雇用とされています。

オランダのアルバイト・パート労働の雇用割合は、2021年調査で60.71%で、世界第一位です。オランダの女性のアルバイト・パート労働の雇用割合は2021年調査で77.67%で世界第一位です。(日本は2021年調査で21.4%が非正規雇用、女性では53.2%が非正規雇用

私がオランダに住んでいた頃、小学校の下校の時間に沢山のオランダ人の保護者が学校にお迎えに来ていたのを見て「いいなぁ」と思ったのを覚えています。保護者の目がいつも子どもの傍にあるから、虐めなどにも早く気づいて転校させてあげたり出来るので、子どもは安心して学校に通えるだろうなと思いました。

オランダでは週休3日制がかなり定着しているので、夫婦が週休3日で働いている場合、子どもが小さい頃でも月曜日はパパが仕事を休んで子どものお世話をして、火曜日はママが仕事を休んで子どものお世話をすれば、残り3日だけ子どもは保育園に通えばいいので、小さい子どもの負担も少ないだろうなと思いました。平日の公園でパパが子どもを遊ばせている姿をよく見かけたのも覚えています。

私は保育園で働いていた時、0〜2歳までの子どもがお昼寝の時間に「ママ〜」と寂しがって泣いている姿をよく見かけました。3歳以上になっても、私の二の腕をモミモミして指しゃぶりしながらお昼寝している子どももいたし、長時間の保育園での生活は子どもにとって負担があるだろうと思っていました。まして、0歳から週6日保育園で預かっていた子どももいたので、子どものためにも日本人の働き方改革が進んで欲しいと思っていました。

みどり
日本も2018年に「働き方改革関連法」が公布され、「同一労働・同一賃金」が中小企業でも2021年から施行されています。しかし、オランダでは1996年にパートタイム労働者に賃金、残業手当、ボーナス、職業訓練などについて、フルタイム就労者と均等な待遇を受ける権利が与えられる法改正がされているので、日本の雇用政策はオランダに比べて20年以上遅れていますね。最近、『#年収200万円』がTwitterでトレンド入りしたらしいです。非正規雇用の労働者も正規雇用の労働者と同じように責任ある仕事を任されて、それによってスキルを身に着けて、給料も同等に働けるようになると良いですね。ワークシェアリングも広がっていくといいなぁ。

まとめ

私がオランダに住んでいたのは日本で「働き方改革関連法」が公布される前のことでした。その頃、「オランダはパート労働者も働きやすくていいなぁ」「ワークシェアリングが進んでいて、家族との時間が沢山取れる働き方が羨ましいなぁ」と思っていました。

しかし、日本も2018年に「働き方改革関連法」が整備され、正社員の過労の防止や非正規雇用の労働者の待遇改善が進んできています。

年収200万円で生活していくのは厳しく、結婚や出産を諦める人も多いと思います。また、介護などで正社員を辞めざるを得ない人も今後増えていくでしょう。日本もオランダのようにフレキシブルに働けるようになるといいなと思います。

読んでくださり有難うございました。

ブログランキング・にほんブログ村へ