私は我が子が自閉スペクトラム症と分かった時に色々調べてABA(応用行動分析)に出会い、ABAに関する本を読んで、育児に意識的に取り入れてきました。そのことについて綴らせていただきます。
ABA(応用行動分析)とは?
ABAは、1987年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のロバース博士が開発した、発達障害のある子どもへの早期療育法です。ロバース博士の研究では、2〜3歳の自閉症幼児19人に週40時間のABAホームセラピーを2年以上継続的に実施したところ、9人(約47%)が小学校入学までに知的に正常域に達し、付き添いなしで普通学級への入学が認められました。研究では、ABAは2〜3歳の低年齢の頃から始めた方が高い効果が認められました。
アメリカのニューヨーク州やカリフォルニア州などでは、専門的なセラピストによるABAホームセラピーが公費負担や医療保険給付の対象になっているそうです。日本では、ABAがまだ普及していなかった2000年にABA療育を行う親の会である「つみきの会」が結成されて、それ以降ABA療育が普及し始め、現在は各地にABA療育行う療育施設が増えています。
ABAの基本的な5つの姿勢
強化
人は何かの行動をとった結果「ごほうび」が与えられると、それ以降にその行動が増加します。「ごほうび」を増やすことを「強化」と呼び、「ごほうび」のことを「強化子」と言います。誉め言葉やお菓子、おもちゃ、本人の好きなものなどが「強化子」になります。
消去
人は何かの行動をとった結果「ごほうび」が与えられないと、その行動は減少します。これを「消去」と言います。
例えば、「おやつ買って〜!」と子どもがお店で癇癪を起こしたとします。その時、癇癪を起こしたからとおやつを買ってあげると、子どもは「癇癪を起こすとおやつを買ってもらえる」と学んで、それ以降癇癪を毎回起こすようになるそうです。癇癪を起こしている時に、相手をしてあげることも「ごほうび」になってしまうので、私は癇癪を起こした時には周囲に危険が無いことを確認したら、無視して落ち着くのを待つことを徹底してきました。現在、我が子は癇癪を起こさないです。
罰
行動の直後に不快なことがあると、それ以降その行動は減少します。
他行動分化強化
他行動分化強化とは、問題行動以外の行動を増やすことによって、問題行動を減らすことを言います。
事前の工夫
問題行動を起こさないように事前に物理的な工夫をすることで、問題行動を未然に防ぎます。
ABAを育児にどのように活用していったら良いのか
我が子が自閉症だと分かった時、私は一体どうやって育てたら良いのか分かりませんでした。当時、自閉症のことを調べてみた時に、「自閉症の人は他人とコミュニケーションが取れなかったり、癇癪を起こしたり、自傷行為や他害行為をする(人もいる)」という情報を目にして、とても怖いと感じました。
だから、我が子がそういう行為を取らなくなるように育てたいと思っていたので、ABAを知って、「この方法で育ててみよう!」と指針が立ったのが私にとって有難かったです。ABAは行動と結果を分析しているので、理路整然としていて分かりやすく、子育てに関して一貫した行動を取れるのが親にとってとても良いと思います。
コミュニケーションが取れない時期にはABAをどう活用すべきか
我が子は2〜3歳の頃は目も合いにくくて、言葉をかけても振り向きませんでした。「耳は聞こえているのかな〜?」という様子でした。その頃、ABAの本に載っていたように「この積み木をお椀に入れて」という課題を我が子にやってみましたが、全然できなくて、正直ちょっとイライラしたりしてしまいました。
「この積み木をお椀に入れて」という課題を10歳の今の我が子にやってもらったら、簡単にできます。やっぱり、レディネスを意識して、現在のその子どもに合った課題を選ぶ必要があると思います。
言葉の意味が分かっていなさそうな時期、やり取りが出来ない時期には、その前段階の課題をしっかりと取り組むべきだと思います。
目を合わせる課題から始めよう
まだ言葉でのやり取りが出来ない段階では、「目があったらコチョコチョする」ようなスキンシップを兼ねた体遊びをしながら、目を合わせる練習、人間関係を築くことを課題を通して繰り返していけば良いと思います。
椅子に座って机に向かう練習は2歳から毎日取り組めました
我が子に椅子に座ってもらって、粘土をしたり、太い水性ペンやクレヨンで絵を描いたりパズルをしてもらうことは、2歳の頃から毎日30分くらい取り組めました。毎日することで習慣化するのは大切だと思います。その時に、うまくできたら褒めたり、虫歯にならないタブレットをあげたりして、ABAの「強化子」を意識して取り組みました。
ABAは2〜3歳の小さい頃から取り組んだ方が良いというのは、絶対にそうだと思います。体が大きくなってきて自我が益々強くなってくる前にABAに取り組み、習慣や行動の癖を付けることが大切だと思います。
あまり目が合わなくてコミュニケーションが取れない時期でも、机に向かって粘土などをしている我が子を褒めたり、見守ったりすることで、親子の人間関係も築かれていくと思います。
癇癪や問題行動への対応はABAを取り入れた方が良いと思います
癇癪を起こしたり、自傷や他害などの問題行動を起こした時の対応は、ABAの「消去」の姿勢を取り入れて、無視をするのが良いと私は思います。保育園で働いていた時にも、わざと大人の気を引こうとしてトイレットペーパーを全部床に落としたり、部屋のおもちゃを投げつけたり、暴言を吐いたりする3歳の子どもがいました。その子は担任の先生の気を引こうとしていたのに、天邪鬼のように拒否する言葉を吐いていました。いつもみんなが困る行動を取りながら、「あっちに行けよ!」と言っていました。
3歳の小さい体だからまだ体を制御出来ていましたが、体が大きくなるほど制御できなくなっていきます。そして、悪い行動を取ることが習慣化されていき、性格も形成されていきます。
問題行動への対応は、2歳〜3歳の小さいうちからABAを取り入れた方が良いと思います。それは、知的障害の程度が重い子どもであっても軽い子どもであっても同じだと思います。
コミュニケーションが取れるようになってきたら?
コミュニケーションが取れるよるようになってきたら、音声模倣や物の名前を教える課題などに取り組んでいったら良いと思います。また、生活の中で「あけて」「手伝って」「ください」などの要求語の表出を促して、それが出来たら「ごほうび」をあげたりすることで、要求語が定着していくと思います。
具体的に何の課題をしたら良いのか分からない時には、この本がとてもお勧めです。この本には、発達に応じた課題が載っていて、ABAの考え方やそれに基づいた子育ての方法が分かりやすく説明されています。
我が子は現在、特別支援学校に通学しています。学校では、国算の時間が毎日30分くらいあって、その時間に一人一人机に向かい、マッチングや分類などの課題に取り組んでいます。課題が上手く出来ると先生に沢山褒めていただいています。学校の先生もABAの考え方を特別支援教育に取り入れ、しっかりと実践してくださっていると思います。
まとめ
癇癪を起こしている時、無視をして大丈夫なのかな?とも思ったこともありますが、当の本人は癇癪が収まらないとこちらの言葉が耳に入らないように感じます。しかも、癇癪や他害行為などの問題行動は、なだめてその場を納めているうちに頻発するようになるのを色々なところで見てきました。やっぱり、「三つ子の魂百まで」の言葉もあるように、2〜3歳のうちからABAを始めて、問題行動には「ご褒美」を与えない一貫した態度を取った方が良いのではないかと私は思います。
関係あるような無いような気がしますが、マザーテレサの言葉に次のものがあります。
思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。マザー・テレサ