一切の忖度なし!オランダ人の率直なコミュニケーションから学んだこと

私がオランダから帰国してからもうすぐ7年が経とうとしています。オランダで楽しかったこと、苦しかったこと、色々な思い出が心に残っているのですが、今の私の日々の生活にもまだ影響していると思うことが1つだけあります。

それはオランダ人から学んだ、率直なコミュニケーションです。

昔20代の頃までは、私はどちらかというと『凪のお暇』の凪のように、空気を読んでニコニコしている女子だったと思います。

覚えているのが、大学生の時に「みどりちゃんはオブラートに包んで話すよね」と友人に言われました。

そんな私がオランダで暮らしていた時に毎度苦しんだのが、オランダ人の率直なダメ出しです。

そのダメ出し(stupid!と言われたこともありました!)を思い出しながら、私を変えたオランダ人の率直なコミュニケーションについて記事にさせていただきます。

私がオランダ人からダメ出しされたシチュエーション例

夫はオランダ人と働いていたので、毎日ダメ出しされていたと思います。その感想については後で少し触れたいと思うのですが、普通の子育て中の主婦でもオランダ人にダメ出しされた事件は枚挙にいとまがありません。

①問題解決に向けて忖度なし!今すぐ行動!事件発生

障害のある我が子のオランダでの幼稚園生活

我が子はアムステルダムの隣町にある日本人幼稚園に通っていました。知的障害があり手術歴もあったので、毎日の通園は難しいと判断され、週1回の午後クラスに通わせていただきました。そこで園長先生や先生方にとても可愛がっていただいていました。
みどり
日本人幼稚園には我が子以外にも障害のある子どもが数人通っていました。割と障害の程度が重い子は、我が子と弱視のお友達がいました。その他にも軽度の発達障害の子どももいました。
また、園長先生からご紹介いただき、その他の曜日にも日本人幼稚園の空いている教室で開かれていた「子育てサークル」に毎週出向き、日本人のお友達やお母さま方と触れ合い遊ばせていました。

オランダでの療育、発達相談

その他には、日本人幼稚園の先生のご主人が運営されている日本人サッカー教室の3歳児クラスにも通わせていました。そこでの活動は、療育の「サーキット運動」のようなもので、とても良い機会になっていました。
みどり
サッカークラスのコーチはとても素敵なコーチでした。オランダはサッカーが強い国として有名です。オランダのサッカー選手を育成する際には「楽しさ」と「自分に自信を持つこと」を軸に指導されるそうです。その指導哲学を取り入れて、日本人のコーチが3歳児が楽しめる内容で、ボールと触れ合ったりマットの上を転がったり平均台の上を歩いたりしながら体の機能訓練をしてくださっていました。また、サッカーはルールのあるゲームなので、みんなで座って話を聴いたり、挨拶をしたり、ゲームで負けた時に気持ちを切り替えたりする心の指導もしてくださっていて、とても良いクラスでした。まさに療育クラスでした。
また、日本人幼稚園には年に2回ほど日本人の心理の先生が来てくださって、そこで発達相談や家庭で出来る療育についての相談をしていました。

オランダでの予防接種と定期健診でオランダ人の忖度なしのダメ出しを受ける

話は戻って、オランダ人から受けた単刀直入、即行動!の話です。

ある日、私は子どもを連れて予防接種と定期健診を受けるために、近所の保健センターに行きました。

みどり
日本から出国する前に自分で英語の予防接種歴の書類を作って、近所のクリニックで医師にサインをもらってオランダに持参し、それを市役所で提出しました。オランダで必ず受けなければならないワクチンのうち、日本でまだ受けていなかったものについて、保険センターで予防接種を受けました。予防接種と定期健診はいつも個室のオフィスに1人の看護師さんがいて、予約制で受けていました。
我が子は早生まれ(3月生まれ)なので、3歳になってすぐに幼稚園年少に入園する対象になります。
知的障害と手術歴があったにも関わらず、日本人幼稚園の園長先生の善意に支えられ、週3回、日本人幼稚園や日本人子育てサークル、日本人サッカークラスに通わせていただき、療育相談も受けていました。
みどり
私は免許は持っていましたが、ずっとゴールドのペーパードライバーでした。その私が慣れない海外で車の運転をして、隣町の幼稚園や体育館まで子どもを連れて行っていたので、私的にはかなり頑張っていました。
保健相談で上記の幼稚園生活やサッカー教室のことを説明すると、オランダ人の保健師さんは受話器を持って「今から日本人幼稚園に電話して、毎日通えるように交渉します!」と言いました。
「えっ!?幼稚園にはかなり気を遣って、なんとか通わせていただいているのに…。日本人幼稚園は職員の数が限られているから…。なんとかご理解いただいて先生1人着けていただいて、週1回のクラスに通わせていただいているのに…。」
↑この心の声をなんとか英語にして伝えて、「今すぐは連絡しなくていいです」とオランダ人の保健師さんに伝えると、
「何で忖度しているのかしらね?毎日通えた方がいいから、今すぐ交渉すればいいのに」と言われ、呆れた表情で、両手を上に開いてジェスチャーをされました。
みどり
問題解決に向けて率直にコミュニケーションを取り、即行動!これがオランダ人なのです!

②意見を言わない人間は話しても価値無しと言われる

これは1度だけではなく2、3度はあったと思います。

オランダ人はとてもフレンドリーです。お散歩中に出会うと、見知らぬアジア人の私に「Goedemorgen!(フーデモルヘン!)おはよう」「Goedemiddag(フーデミダハ!)こんにちは」「 Tot ziens(トッツィン)さようなら」と誰もが挨拶してくれました。自転車ですれ違うと、すかさず私にウィンクしてくれたりしました。

それが近所の人だと毎日会うようになるので、色々会話する仲にすぐなります。

日本人の私はオランダ人に忖度します。家族の話、子どもの話、季節の話、咲いている花の話など、当たり障りのない会話を探し出そうとします。

しかし、オランダ人が求めているものは違うのです!

「何の仕事をしているのか?」「オランダについてどう思うのか?」「日本は〇〇についてどんな政策を取っているのか?」など率直になんでもお互いに質問し、政治の話でも歴史の話でもなんでも話し合いたいと思っています。オランダ人は議論好きなのです

私が当たり障りのない会話を続けようとして、最後に何を話したら良いのか分からなくなってしまった時、

毎日優しく挨拶して可愛がってくださった隣人の方が少し怒りながら言いました。

「君と話しても何も得られるものがないよ」

その後はその方と会っても、すれ違うだけの仲になってしまいました。(悲しいトラウマ)

他の方とも同じような場面があり、

「その話(家族の話)はもう聞いたよ。別の話をしよう!」

と言われたこともあります。

みどり
オランダ人のすごいところは、オランダ語が話せない相手であれば、老人でも英語で話しかけてくれるところです。会話しているメンバーに一人でもオランダ語が話せない人がいれば、英語に切り替えてくれる国民です。これが「文化の吸収スポンジ」と言われているオランダ人のマナーなのです。私は英語が拙い上に会話の引き出しも無かったので、残念でした。もっと歴史や宗教、文化のことなどに関心を持って、色々質問したり、話したりするネタがあれば良かったです。その反省もあって、帰国してからも英語の勉強を続けたり、世界史の学び直しをしています。

街中のカフェやレストランで、数人のオランダ人が「Ja(ヤー)はい」「Nee(ネー)いいえ」という声を飛び交わして、熱い議論を繰り広げている姿をよく目にしました。カフェで出会ったばかりの複数の人が議論しているという場面もあったと思います。何しろ、街を歩いていると「Ja!」「Nee!」という大きな声が聞こえてくるのです。

みどり
答えにはっきりと白黒つけるんでしょうね。オランダでは小学生の頃から積極的にディベートや議論をする機会を沢山設けているようです。オランダの教育について触れているので、よろしければ「【オランダ・イエナプラン】『公教育をイチから考えよう』を読んだ感想」もご覧ください。

オランダ人のコミュニケーションの取り方は低文脈文化で率直

オランダ人のコミュニケーションは世界で一番低文脈文化

オランダ人のコミュニケーションが率直なのは、歴史的背景があります。

このブログの別の記事でも記載させていただいてきましたが、オランダは17世紀の大航海時代は世界貿易の中心でした。富が集まり、「自由」がありました。

みどり
オランダは国土の1/4が干拓地です。「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」という言葉があるのですが、オランダは大航海時代に儲けた富でせっせと干拓し、国土を作っていきました。しかし、オランダ人は自分の土地を所有する意識が希薄で、アムステルダムにある土地の多くが市の所有になっています。「土地は社会の連帯によってつくりあげるもの」という矜持を国民が持っており、それがオランダ人が私利私欲に走ることを生理的かつ合理的に拒み、社会の「全体善」に向かって政治の舵を切っている現状にも繋がっています。

思想面においても自由なアムステルダムに、ヨーロッパ諸国からデカルト(1596年‐1650年)、ジョン・ロック(1632年‐1704年)、ユダヤ人哲学者のスピノザ(1632年‐1677年)などの哲学者なども集まり、活躍しました。また、政治難民や宗教難民も受け入れて、ユダヤ人のシナゴーグ(礼拝堂)を建築することも許されていました。

みどり
オランダは長い歴史の中でずっと迫害されてきたユダヤ人も寛容に受け入れてきました。アムステルダムにはユダヤ歴史博物館や有名なアンネ・フランクハウスがあります。我が子には障害があります。戦争が起きれば健常者も障害者も人権なんて無くなってしまうので、国際平和を願いつつ歴史を学んでいます。

このように、思想や文化や宗教、様々な人種を受け入れてきたことから、異なるものを受け入れる「寛容さ」を持っていることがオランダ人の特性になっていきました。(ただし、その背景には「経済的繁栄」を狙ってのオランダ人のしたたかな合理主義の精神があります。)

その「寛容」で「合理的」なオランダ人の特性は、コミュニケーションの取り方にも影響を与えていきました。

世界を相手に貿易を行うために、相手の生活習慣や文化価値観、あらゆる異なるものを寛容に受け入れて、相手をリスペクトし、交渉して信用を築いていくためには、「言ったことが全ての意味」となる率直で明確なコミュニケーションをとる必要がありました。そういうコミュニケーションを『脈コミュニケーションの文化と言います。世界で一番低文脈文化なのは、オランダとドイツとされています。

みどり
低文脈コミュニケーションの国では、言ったことが相手に伝えきれていない場合には、分かりやすく説明できなかった話し手の責任とされています。意味が明確に理解出来なかった場合、聞き手は何度でも分かるまで質問することが礼儀だとされています。

日本人のコミュニケーションは世界で一番高文脈文化

一方、世界の大航海時代には日本は鎖国をして国を守っていました。(ただし、その頃もプロテスタントで貿易しか興味がないオランダとだけ交流していました。オランダの交渉能力すごいな)

みどり
その頃の歴史について、「ハプスブルク帝国の歴史とハプスブルク展に行った感想について」の記事でも触れています。宜しければご覧ください。
同じ民族で、長い間鎖国をしてきた平和な日本では「空気を読んで」「一を聞いて十を知る」「言ったこと以外にもお互いに察して伝え合う」、『文脈コミュニケーションの文化が発達していきました。
この「高文脈」「低文脈」の分類は、アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールが『文化を超えて』(1976年)で世界中の言語コミュニケーションの型を高文脈文化と低文脈文化に分類したことに始まっているのですが、この著書で日本語は世界で最も高文脈コミュニケーションであると述べられています。
みどり
世界で最も空気を読む日本人である私が、オランダ人の率直なコミュニケーションでコテンパンに凹まされてきた背景が理解できたわ!

空気を読むより話し合う方が前に進む

日本人は空気を読むのが得意です。私も暗に示したりほのめかしたりします。

でも、それで苦労することが多すぎると感じるのです!

海外生活では何度もダメ出しをされたり、失敗してしまったこともあって、コミュニケーションでお互いのわだかまりを解決し、抱擁して許し合った忘れられない夜もありました。
その時に強く思いました。
「問題はコミュニケーションでしか解決できない。」
その思いだけは、帰国してからもずっと残っています。夫婦間の話し合いとか、両親との考え方の擦り合わせとか、ママ友トラブルとか、そんなの全部、私はいつもコミュニケーションで解決しようとしてきました。
そして、それは全部失敗で終わりませんでした。空気を読もうとすると硬直してしまうばかりなのです。

日本はビジネスでも空気を読んで忖度して遅い

これは私がまだ総合職会社員だった2010年頃の記憶です。

私はブログのプロフィールで「営業とマーケティングをしていた」と記載しています。

「マーケティング」をしていた頃は「マーケティング部」で「新サービス開発」担当にいました。

新しいアイディアを出して新サービスを企画して、アライアンスを組んだりする担当だったのですが、2年4カ月やりましたが何の成果も出せなかったので「マーケティング」だけしていたように記載しています。

何度もアイディアを出して、ポシャって、結局はトップが挙げた案にみんなが忖度して「いいですね!」とか言って持ち帰って、何も進まず硬直して、結局ポシャって。私も含めて会議中に誰もまともに発言が出来ませんでした。

そんなことしていたから、日本は”失われた30年”なのだと思います。

みどり
もっと危機感もって社会のために働けば良かった。
オランダにいた頃、夫はオランダ人とビジネスをしていましたが、オランダ人は率直で忖度もしなくて、上下関係がフラットなので、会議でどんどん発言して、前に前に物事を動かしていたそうです。今の日本のビジネス環境は変わっているのでしょうか?もう若い人には空気を読んで欲しくないですね。
みどり
サッカー強国オランダのプレイを見ていて思います。ゴールを決めるのに恐れや迷いが無い。最近は日本も強くなってきて、ビビらなくなって来ました!若い世代に期待しています。

まとめ

私はオランダ人の率直な低文脈コミュニケーションでダメ出しを沢山受けてきました。

親切なお友達だと思っていたオランダ人がサプリメントを売りつけてきたのでやんわりと断ったら、「stupid!(バカ)」と電話口で怒鳴られて電話を切られた時も悲しかったです。

「分かりやすく伝えることが話し手の責任」のオランダ人のコミュニケーションと、「空気を読んで伝える」日本人のコミュニケーションは真逆なのですが、どちらが正しいとか良いというものではありません。

しかし、私はオランダ人のコミュニケーションが体に少し染みついたので、そちらを選択したいと思っています。

なぜなら昨年、とても大切で大好きだった友人が2人も病気で亡くなってしまい、もう言葉が届かないからです。

近所に住んでいたのだから、私はもっと「会いたい」と伝えて、思っていたことをちゃんと話し合いたかった。

彼女の悩みも聞いてあげたかった。

でも、もう届かないのです。すごく後悔が残るので、もう空気を読んでオブラートに伝えるのはうんざりです。

読んでくださり有難うございました。

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