私がオランダから帰国してからもうすぐ7年が経とうとしています。オランダで楽しかったこと、苦しかったこと、色々な思い出が心に残っているのですが、今の私の日々の生活にもまだ影響していると思うことが1つだけあります。
それはオランダ人から学んだ、率直なコミュニケーションです。
昔20代の頃までは、私はどちらかというと『凪のお暇』の凪のように、空気を読んでニコニコしている女子だったと思います。
覚えているのが、大学生の時に「みどりちゃんはオブラートに包んで話すよね」と友人に言われました。
そんな私がオランダで暮らしていた時に毎度苦しんだのが、オランダ人の率直なダメ出しです。
そのダメ出し(stupid!と言われたこともありました!)を思い出しながら、私を変えたオランダ人の率直なコミュニケーションについて記事にさせていただきます。
私がオランダ人からダメ出しされたシチュエーション例
夫はオランダ人と働いていたので、毎日ダメ出しされていたと思います。その感想については後で少し触れたいと思うのですが、普通の子育て中の主婦でもオランダ人にダメ出しされた事件は枚挙にいとまがありません。
①問題解決に向けて忖度なし!今すぐ行動!事件発生
障害のある我が子のオランダでの幼稚園生活
オランダでの療育、発達相談
オランダでの予防接種と定期健診でオランダ人の忖度なしのダメ出しを受ける
話は戻って、オランダ人から受けた単刀直入、即行動!の話です。
ある日、私は子どもを連れて予防接種と定期健診を受けるために、近所の保健センターに行きました。
②意見を言わない人間は話しても価値無しと言われる
これは1度だけではなく2、3度はあったと思います。
オランダ人はとてもフレンドリーです。お散歩中に出会うと、見知らぬアジア人の私に「Goedemorgen!(フーデモルヘン!)おはよう」「Goedemiddag(フーデミダハ!)こんにちは」「 Tot ziens(トッツィン)さようなら」と誰もが挨拶してくれました。自転車ですれ違うと、すかさず私にウィンクしてくれたりしました。
それが近所の人だと毎日会うようになるので、色々会話する仲にすぐなります。
日本人の私はオランダ人に忖度します。家族の話、子どもの話、季節の話、咲いている花の話など、当たり障りのない会話を探し出そうとします。
しかし、オランダ人が求めているものは違うのです!
「何の仕事をしているのか?」「オランダについてどう思うのか?」「日本は〇〇についてどんな政策を取っているのか?」など率直になんでもお互いに質問し、政治の話でも歴史の話でもなんでも話し合いたいと思っています。オランダ人は議論好きなのです。
私が当たり障りのない会話を続けようとして、最後に何を話したら良いのか分からなくなってしまった時、
毎日優しく挨拶して可愛がってくださった隣人の方が少し怒りながら言いました。
「君と話しても何も得られるものがないよ」
その後はその方と会っても、すれ違うだけの仲になってしまいました。(悲しいトラウマ)
他の方とも同じような場面があり、
「その話(家族の話)はもう聞いたよ。別の話をしよう!」
と言われたこともあります。
街中のカフェやレストランで、数人のオランダ人が「Ja(ヤー)はい」「Nee(ネー)いいえ」という声を飛び交わして、熱い議論を繰り広げている姿をよく目にしました。カフェで出会ったばかりの複数の人が議論しているという場面もあったと思います。何しろ、街を歩いていると「Ja!」「Nee!」という大きな声が聞こえてくるのです。
オランダ人のコミュニケーションの取り方は低文脈文化で率直
オランダ人のコミュニケーションは世界で一番低文脈文化
オランダ人のコミュニケーションが率直なのは、歴史的背景があります。
このブログの別の記事でも記載させていただいてきましたが、オランダは17世紀の大航海時代は世界貿易の中心でした。富が集まり、「自由」がありました。
思想面においても自由なアムステルダムに、ヨーロッパ諸国からデカルト(1596年‐1650年)、ジョン・ロック(1632年‐1704年)、ユダヤ人哲学者のスピノザ(1632年‐1677年)などの哲学者なども集まり、活躍しました。また、政治難民や宗教難民も受け入れて、ユダヤ人のシナゴーグ(礼拝堂)を建築することも許されていました。
このように、思想や文化や宗教、様々な人種を受け入れてきたことから、異なるものを受け入れる「寛容さ」を持っていることがオランダ人の特性になっていきました。(ただし、その背景には「経済的繁栄」を狙ってのオランダ人のしたたかな合理主義の精神があります。)
その「寛容」で「合理的」なオランダ人の特性は、コミュニケーションの取り方にも影響を与えていきました。
世界を相手に貿易を行うために、相手の生活習慣や文化価値観、あらゆる異なるものを寛容に受け入れて、相手をリスペクトし、交渉して信用を築いていくためには、「言ったことが全ての意味」となる率直で明確なコミュニケーションをとる必要がありました。そういうコミュニケーションを『低文脈コミュニケーションの文化』と言います。世界で一番低文脈文化なのは、オランダとドイツとされています。
日本人のコミュニケーションは世界で一番高文脈文化
一方、世界の大航海時代には日本は鎖国をして国を守っていました。(ただし、その頃もプロテスタントで貿易しか興味がないオランダとだけ交流していました。オランダの交渉能力すごいな)
空気を読むより話し合う方が前に進む
日本人は空気を読むのが得意です。私も暗に示したりほのめかしたりします。
でも、それで苦労することが多すぎると感じるのです!
日本はビジネスでも空気を読んで忖度して遅い
これは私がまだ総合職会社員だった2010年頃の記憶です。
私はブログのプロフィールで「営業とマーケティングをしていた」と記載しています。
「マーケティング」をしていた頃は「マーケティング部」で「新サービス開発」担当にいました。
新しいアイディアを出して新サービスを企画して、アライアンスを組んだりする担当だったのですが、2年4カ月やりましたが何の成果も出せなかったので「マーケティング」だけしていたように記載しています。
何度もアイディアを出して、ポシャって、結局はトップが挙げた案にみんなが忖度して「いいですね!」とか言って持ち帰って、何も進まず硬直して、結局ポシャって。私も含めて会議中に誰もまともに発言が出来ませんでした。
そんなことしていたから、日本は”失われた30年”なのだと思います。
まとめ
私はオランダ人の率直な低文脈コミュニケーションでダメ出しを沢山受けてきました。
親切なお友達だと思っていたオランダ人がサプリメントを売りつけてきたのでやんわりと断ったら、「stupid!(バカ)」と電話口で怒鳴られて電話を切られた時も悲しかったです。
「分かりやすく伝えることが話し手の責任」のオランダ人のコミュニケーションと、「空気を読んで伝える」日本人のコミュニケーションは真逆なのですが、どちらが正しいとか良いというものではありません。
しかし、私はオランダ人のコミュニケーションが体に少し染みついたので、そちらを選択したいと思っています。
なぜなら昨年、とても大切で大好きだった友人が2人も病気で亡くなってしまい、もう言葉が届かないからです。
近所に住んでいたのだから、私はもっと「会いたい」と伝えて、思っていたことをちゃんと話し合いたかった。
彼女の悩みも聞いてあげたかった。
でも、もう届かないのです。すごく後悔が残るので、もう空気を読んでオブラートに伝えるのはうんざりです。
読んでくださり有難うございました。