オランダの介護保険制度の大改革について【福祉国家から参加型社会へ】

世界で初めて介護保険を創設した国はどこでしょう?
答えはオランダです!
1968年に世界に初めて介護保険を創設しました。

みどり
オランダは2001年に世界で初めて国家として同性婚(婚姻解放法)や安楽死(要請に基づく生命の終焉ならびに自殺幇助法)を認めた国です。オランダは法制度の整備に関して世界の最先端を行っていますね。毎年8月にLGBTの人々の平等をお祝いするイベント(Gay Pride)が盛大に行われます。
そのオランダで、2007年と2015年に医療・保険・介護に関する法律が改正され、ヘルスケア・システムの改革が行われました。
その結果、福祉国家オランダは終わり、ヘルスケア・システムは
「まず、自分で出来ませんか?」
「それなら家族、友人知人、隣人に相談してみましょう」
「地域にはボランティア組織がありますよ」

「それらの支援が受けられない時に初めて福祉サービスが使えます」
というスタンスに変わりました。
国が何とかしてくれるというシステムではなく、国民の40%以上が行っているボランティアによって支え合うというシステムに変わりました。
今回は、オランダの福祉制度について本を読んで調べたことを記事にさせていただきます。
みどり
日本の介護保険制度については、よろしければ「知っておきたい!介護保険制度と介護漫画『ヘルプマン』について」をご覧ください。

オランダの福祉制度の大改革

2015年大改革の背景(高い介護関連支出)

オランダの人口は約1,750万人で、高齢化率は約19.95%(2023年)と、OECD諸国の平均と同レベルにあります。しかし、ヘルスケア支出(医療・介護・リハビリ・予防を含む)の総額は年間約700億ユーロであり、一人当たり支出は5,188ユーロと、OECD諸国のなかでも高く、アメリカ、スイス、ノルウェー、ドイツ、オーストリア、スウェーデンに次いで第7位にあります。(OECD2019年調査)

みどり
なお、日本の高齢化率は2025年に30%に届こうとしています。
オランダは移民の流入が盛んな国ですが、少子高齢化は確実に進んでおり、「施設から在宅介護へ」という転換や予防介護が推進されたことにより、2015年の介護関連支出の対GDP比はOECD諸国の中で最も高い状況にありました。増え続ける社会保障費を抑制し、継続可能なものにするため、オランダは2015年にヘルスケア・システムの大改革を行いました。
みどり
問題を先延ばししないお国柄や国民性については、よろしければ「一切の忖度なし!オランダ人の率直なコミュニケーションから学んだこと」もご覧ください。

2013年、国務大臣による「長期的なサポートやケアの改革」の声明

①本人が「できないこと」ではなく「できること」から出発して考える。生きることの「質」を最前列に置く。
②支援が必要な場合は、最初に本人のソーシャルネットワークと関係者(家族、友人)の経済的能力を考慮する。支援は近隣でアレンジする。
③周辺の人々からの支援を含めても、これ以上自立した生活ができない人には、参加を後押しする支援、適切なケアを提供する。
④新しい介護保険では、もっとも弱い立場の人々は「保護された施設環境」で適切なケアを受ける権利を保障する。
⑤市町村が新しい重要な役割を全うするために、社会支援法の充実が必要である。社会支援法による家事援助サービスは、本当に必要で経済的にアレンジできない人々のみに限定される。市町村は予算の60%を保持して、市民に幅広くサービス提供する。
⑥住人の社会参加を促す「保護住宅」は市町村管轄が適していると考える。この方向で模索を続ける。

松岡洋子著『オランダ・ミラクル ー人と地域の「力」を信じる高齢者福祉ー』2021年株式会社新評論発行より引用

みどり
「国」が介護サービスの全てを与えるのではなく、まず①個人、そして②家族、そして近隣(地域)で支え合い、これらで支えきれない場合には③「制度」があり、④もっとも虚弱(重度)な人には「施設的な環境」を提供するということになりました。介護福祉予算の削減分はボランティアでカバーするため、「社会支援法」で住民の社会参加を促進させています。

2013年、国王による就任演説においての発言

今日のネットワーク・情報化社会では、人々はより積極的で自立しており、財政赤字削減の要求もあって、古典的な福祉国家はゆっくりと確実に参加型社会へ変化しています。それができる人は、自分の生活と周りの環境に責任をもつことが求められるようになるでしょう。(中略)参加型社会へのシフトは、社会保障制度と介護制度においてとくに顕著で、古典的な戦後型福祉国家の仕組みはもはや持続不可能であり、人々の期待にこたえることはできません。今日、人々は、自分で選び、自分の生活をマネジメントし、お互いに助け合うことができるようになりたいと望んでいます。そのためにも、ケアや社会サービスは人々の近くで一貫した形で組み立てられるほうがよいでしょう。それによって、地方分権が進められるのです。

松岡洋子著『オランダ・ミラクル ー人と地域の「力」を信じる高齢者福祉ー』2021年株式会社新評論発行より引用

オランダ王国の国民(Dutch)は毎年4月27日のKing’s Day(国王の誕生日)を盛大にお祝いします。私も国民的スーパーであるアルバートハイン(Albert Heijn)で購入したオレンジ色の帽子を被ってオレンジ色の服を着て街に繰り出しました。懐かしい。それくらい、オランダ王室は国民に愛されています。
みどり
2013年に開かれた国王の即位式では、世界ナンバーワンDJであるArmin van Buurenがロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(オランダが誇る世界3大管弦楽団の1つ)とともに記念ライブを行いました。イケイケな国王なので、国民から人気な理由が分かりますね。ちなみにオランダはEDM最強国です。私の大好きなSEKAI NO OWARIの『Dragon Night』にオランダ人のEDMプロデューサー・DJのニッキー・ロメロがプロデューサーとして参加しました。
中高吹奏楽部でクラリネットを吹いていた私。コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサートにも何度か行きました。(写真の席では管弦楽団の一員として演奏している気分になれました。)コンセルトヘボウのドレスコードは緩くて、素敵なホールで気軽にコンサートを楽しむことが出来ます。コンセルトヘボウでは毎週水曜日のお昼に無料のランチタイムコンサートが開かれていて、子どももクラシック音楽に親しむことが出来ます。

ヘルスケア・システムの大改革の内容

オランダのヘルスケア・システムは2007年、2015年の大改革を経て、4つの法律(医療保険法新介護保険法社会支援法青少年法)によって成り立っています。

https://report.jbaudit.go.jp/effort_study_mag/2018_sw.pdf より引用

医療保険法(Zvw)

医療保険法は、2006年に職業別の3保険が一元化され、選択制や「規制された競争の原理」を取り入れて新設されました。医療保険は、全国民を対象にホームドクター(かかりつけ医)の医療費、リハビリテーション、予防、公衆衛生から病院での医療費までを幅広くカバーしており、2015年以降は旧介護保険から訪問介護・看護も移行されて医療保険に含まれるようになりました

保険者は公益性の高い民間保険会社であり、被保険者はオランダに住んで働く人全員が給料天引きで保険料を払う(強制)と同時に、保険会社から医療保険パッケージを自由に選んで契約(購入)します。

みどり
オランダで病院にかかるためには、まず「ホームドクター」を探して登録してもらいます。熱が出たり骨折したり、どんな体調不良に関してもまず「ホームドクター」に相談します。オランダに住んでいた時、子どもが3日間くらい39度超えの熱を出したので、心配してホームドクターに診てもらいました。しかし、オランダでは熱が出たくらいで受診しても「私には何もできませんよ。家に帰ってパラセタモール(解熱鎮痛剤)を飲んで早く寝なさい」と言われるだけです。これはネタになっていて、Googleの検索窓で「dutch doctor」と入れると予測変換で「dutch doctor paracetamol」と出てきます。インフルエンザにかかろうが新型コロナにかかろうが、「パラセタモールを飲んで寝て治す!」この心意気が無ければオランダでは暮らせません。
思い出のパラセタモール。「医療費はタダではない!病気は自然免疫で治す!」という私のサバイバル精神はオランダで培ったものかもしれません。

2006年の医療保険法の改正により、「医療は無料ではなく費用がかかっている」という意識を持たせるため、利用者負担が上げられました。また、製薬会社はジェネリック医薬品の価格を40%まで落とすように求められました。さらに病院は、同じ予算で多くの患者を治療できるようにと工夫が求められました。保険会社は、以前は全ての事業者と契約することが義務づけられていましたが、質の高い事業者を選んで契約するシステムへと変更されました。

2015年の医療保険法大改正により、看護師による訪問介護看護サービスが旧介護保険(AWBZ)から医療保険へと移行されました。旧介護保険の際は看護師による訪問介護看護サービスの利用の可否とその内容についての査定は国の独立機関である査定センター(CIZ)が行っていましたが、訪問介護看護サービスが医療保険へと移ってからは、ケア・プロバイダー(介護組織)に所属する地域看護師(Wijkverpleegster・レベル5)が行うことになりました。

みどり
オランダでは1997年以降、看護師(Verpleegster)と介護士の資格が一元化され、介護職から看護職へと移行できる資格制度が導入されました。現在、看護師は「レベル1」から「レベル5」までの段階に分かれていて、「レベル1」が主として家事援助を行うヘルパー、「レベル2」と「レベル3」はは主として身体介護を行う介護士で、「レベル3」は介護計画の作成、報告書作成が出来る人です。「レベル4」と「レベル5」が看護師で、「レベル5」の看護師は大学レベルの教育を受けており、組織運営を任されることが多いです。また、「レベル5」の看護師は、上級看護実践の修士号を取得すると「ナース・プラクティショナー(NP)になることが出来て、診療所のホームドクターの側にいて、診断や薬の処方をすることが出来ます。

なお、オランダの医療保険の財政規模は465ユーロ(2017年)でその86%が保険料で賄われており、自己負担率が9%、政府補助はわずか5%です。(オランダの保険料は高いです!給料天引きの支払いと医療保険会社から購入する保険料を合わせると、一人月額270ユーロ(約3.5万円)になります。)

保健会社が販売する医療保険には、「基本医療パッケージ」と「付加医療パッケージ」があり、若者は「基本医療パッケージ」のみで、高齢者はニーズに合わせて「付加医療パッケージ」を選ぶ傾向があります。

みどり
確かに、私も国民健康保険料を毎月支払っていますが、基本的には病院にかかることはほとんど無いです。しかし、高齢者は日常的に薬を飲んでいたりする方が多いので、世代間で格差がありそうですね。オランダって本当にシビアな国で、習慣的に公園で走っている人が多いのです。「太っているのは自己管理が出来ない人」というレッテルが貼られるくらい、個人の自由が守られるのと同時に社会に対しての責任を求めらる国なのです。

新介護保険法(Wlz)

2015年1月1日より、旧介護保険法(AWBZ)が新介護保険法(Wlz)になりました。新介護保険法によって、対象者は24時間のケアと監視が必要な、重度認知症の高齢者や重度知的障害者・身体障害者、精神障害者などに絞り込まれ、新しい制度へと生まれ変わりました。その査定には、国の独立機関である査定センター(CIZ)が厳格に関わっており、保険者は国(中央政府)で、保険料は所得に合わせた額が給料から強制的に天引きされます。

社会支援法(Wmo)

社会支援法はあらゆる市民の「自立と参加」の促進を目的とした法律で、病気・障害・高齢などによって日常生活に困難を感じている人全てを対象にしています。租税方式で自治体が管轄しています。

具体的な支援内容は、

〇社会的絆の醸成
〇ソーシャルケアの提供(家事援助、福祉用具、補助器具、住宅改修、移動支援、アクティビティ、身体障害者の保護住宅、精神障害者への相談・生活支援・生活リハビリなど)
〇家族介護者、ボランティアのサポート
〇情報提供、アドバイス、利用者のサポート
〇青少年支援
〇障害者の社会参加の促進
〇シェルター提供(精神の障害、ホームレス、DV被害者)
〇公衆精神保健、中毒に関する政策の促進
〇DV、虐待(高齢者、児童
〇金銭に関する支援

があります。

みどり
子どもを虐待から地域で守っていこう!という内容、良いですよね。日本の法律は「高齢者」「障害者」「児童」と縦割りになっているので、動きにくい場面がありそうですよね。

青少年法(Jw)

青少年法は、児童と青少年を対象とするものであり、若者のメンタルヘルスや健やかに育つ環境保障を目的としており、18歳以下の精神障害児、知的障害児なども対象となっています。

オランダの福祉制度を支えるボランティア

ボランティアが盛んな背景

オランダには歴史的な背景から宗教別、イデオロギー別、人種別などにグループがあり、それぞれの学校や病院、保険、政党、労働組合、経営者団体、新聞、放送局、小売店などが存在し、それぞれのグループの中での生活が行われてきました。

そうしたグループの中で生活していくために結束や助け合いが盛んになり、ボランティア活動が活性化しました。

1980年代以降、宗教離れや個人の自立が進んでいくと、それまではそれぞれのグループの中でボランティア活動を行っていた人たちが非営利民間組織(財団)に活動の場を移して、社会参加するようになっていきました。

みどり
オランダでは国民の40%以上がボランティア活動を行っているそうです!なお、一般的にボランティアを行っているのは高齢の女性が多いです。また、学生が専門職の実習期間としてボランティア活動を行うことも多いようです。学生だけではなく、ボランティア活動の経験はキャリアの一部として認められ、転職の際に有利となるため、企業に努めている若者も増えてきています。各福祉組織では、ボランティア活動を支えるための教育や研修にも力を入れています。

介護サービスを提供する「財団」

介護サービスを提供するケア・プロバイダーなどの福祉組織のほとんどは、利益を目的とせず、社会的な目的をもって非営利活動を行う「財団」です。「財団」は商工会議所で商業登録するだけで設立することが出来(商業登録に必要な資金は50ユーロのみ)、補助金や寄付金、遺産などが主たる財源になっています。また、事業で利益が出た場合、その利益を事業目的以外に使うことは出来ません。

オランダには約4万の「財団」があり、友人と立ち上げた小さな財団もあれば、年間売上が600万ユーロ(約7億8,000万円)を超える巨大な財団もあります。(年間決算書を提出しなければならないのは、年間売上が600万ユーロを超える大きい財団のみであり、国税局に非営利活動を行っていることを届け出れば、税制面で優遇を受けることが出来ます。)

なお、「福祉組織」とは、専門職を雇用して、ボランティアを活用しながら様々な生活課題を支援する組織のことをいい、ボランティアのみで構成される組織は「ボランティア団体」とされています。「福祉組織」の活動の目的には高齢者・認知症の人やその家族の支援、子ども・家庭支援、薬物依存症やアルコール依存症の人の支援、障害児をもつひとり親家庭の支援、移民や難民にオランダ語を教えながら友人になっていくなど、多様なものがあります。

福祉組織が提供している介護サービス例

アムステルダムとハーグの間にある、人口11万人のライデン市にある高齢者支援「財団ラディウス」は、正規職員70人に対して700人のボランティア(無償)が活躍しており、7,000人の利用者(主に高齢者)に対して、デイ・アクティビティや様々な生活支援、移動支援を行っています。「財団ラディウス」はの年間予算は約350万ユーロ(約4.5億円)で、その内訳は社会支援法(Wmo)関連が60%、利用者負担金が25%、残り15%は介護医療保険会社との契約でプロジェクトを行った際の収入です。

「財団ラディウス」には運転ボランティアとして登録している人が60人います。ライデン市では、タクシー会社と提携して障害者支援法による送迎サービスを1回35ユーロで提供していますが、「財団ラディウス」の移動支援は1回7ユーロと低額です。そのため、市も積極的に「財団ラディウス」の移動支援の利用を利用者に呼び掛けています。

その他には、日曜大工サービスや、保険会社との契約のもと緊急アラームサービス(現場駆けつけ)、冷凍食品の宅配サービスを行っています。

みどり
オランダ人は一日一食しか温かい食べ物を食べません。朝と昼はサンドウィッチ(具はハムかチーズかの1種類)、夜は茹でたジャガイモをマッシュしたスタンポットと燻製ソーセージという食事で、バリエーションがものすごく少ないです。だから冷凍食品の宅配で満足できる人が多いと思います。(オランダは社会支援法の下では家事援助は週に2時間以下と制限されました。)また、基本的にバスタブに入って入浴せず、シャワーで済ませます。日本人の生活ってオランダ人に比べるととっても贅沢ですね。その分、介護も大変になっているのかもしれません。
オランダの伝統的な家庭料理、ヒュッツポット。オランダはプロテスタントの国で質実剛健なお国柄なので、食生活が質素です。オランダの歴史について、宜しければ子連れ旅行、ベルギーの歴史とブリュッセルの旅についてもご覧ください。

追記 それでもオランダの介護関連費用は増えている

この記事を書いた後、OECD諸国のヘルスケアシステムに関わる費用に関する2023年のレポートが掲載されました。2023年のレポートでは2021年の各国の状況が報告されました。

OECD Health Statistics 2023より引用
https://create-myway.com/wp-admin/post.php?post=5593&action=edit より引用

オランダの2021年の介護関連支出の対GDP比は2015年の3.7%から2021年には4.4%まで伸びています。
2015年にヘルスケアシステムの大改革をしてから2017年くらいまでは抑制できていたようですが、その後支出が大きくなり、2020年以降はコロナの対策で費用が大きく膨らんだようです。依然としてOECD諸国の中で最も高い状況にあります。

OECD Health Statistics 2023 より引用

オランダの介護関連支出の内訳を見てみると、ケアホームの支出割合が82%で最も高く、その次に病院が7%、在宅介護が1%となっています。日本の支出の割合が介護老人施設の支出割合が45%、病院21%、在宅介護が19%となっています。オランダでは介護が必要になると地域に密着した高齢者住宅に入る人が多いようです。高齢者住宅には自立型や介護型の種類があり、自立型施設の各住戸は広く快適で1階のレストランで三食提供されるような施設です。介護型施設は新介護保険の査定を受けた人々のうち重度の人だけが入れます。オランダの在宅介護の割合は日本よりも圧倒的に少ないので、介護が必要になるとすぐに高齢者住宅に入るようです。

まとめ

私は子どもが幼稚園を卒園して特別支援学校に入学してから保育園や幼稚園で働き始め、今は障害者の通所施設でパート勤務をしています。

子どもが幼稚園に通っていた頃は幼稚園のコーラスサークルや学校教育支援コーディネーターさんが運営しているボランティアのグループに入っていて、そこで他のママ達と一緒に幼稚園のお誕生日会を盛り上げたり、園児がお世話になっている高齢者のデイサービスを訪問してみんなで『ふるさと』や『みかんの花咲く丘』を歌ったりしました。幼稚園は公立幼稚園だったので地域との繋がりが強く、子どもが卒園した今もママ達の活動は続いていて、公立幼稚園の活動を広げたり、地域の児童館で子育て支援をしたりしています。コーラスサークルやボランティア活動で出来たママ達との友人関係は卒園した今も続いています。地域との関わりは自分のためにも大切にしたいと思っています。

ボランティアで出来る友人関係はとても楽しいです。これまで保育園や幼稚園で働いてきましたが、辞めてしまうと人間関係が切れてしまうのですが、ボランティアで出来た人間関係は切れません。ボランティアは楽しいし友達が出来る。だからオランダ人はボランティア活動を積極的にやっているのではないでしょうか。

話は変わって、「介護福祉士実務者研修」を受けた際、「家事援助」する時に、利用者さんから介護のプロなのに家政婦のように扱われるのが嫌だという現場の声を聴きました。本当にそうだと思います。

私は仕事で障害者の身体介護をしていますが、プロの仕事はど素人には真似できません。目の前で利用者さんが癲癇で倒れた時、ど素人の私は何も出来ませんでしたが、ベテランの職員さんはとても冷静に対応されていました。プロにしか出来ないこともあります。日本も社会保障費の増大を抑える必要があるので、プロにしか出来ないことはプロがプライドを持って働き、それ以外のボランティアにも出来ることはボランティアも参加して、プロとボランティアが協働しながら高齢者や障害者、ひとり親家庭や引きこもりなど、様々な人々を支える仕組みが出来ると良いと思います。

オランダは移民が多く、1950年代から1970年代にかけての高度経済期には移民が労働力不足を補ってきました。しかし、近年は「モノ」(工業社会)から「非モノ」(脱工業社会)に変化し、単純労働から知的生産労働へ労働市場が変化しました。そのため、ここ10年程の間に移民・難民政策を転換し、「寛容」から「排除」「移民統合」へと舵を切ってきています。近年は移民や難民に対して入国審査が厳格化しています。

オランダは日本に比べて移民が多く、元々様々な人種や宗教の人々が一緒に暮らしてきているので、一律の社会保障制度を国民に提供することは難しいため、自分たちの地域のコミュニティを自分たちで支える仕組みが求められて、その結果ヘルスケア・システムが抜本的に改革されたのではないかと思いました。

移民や難民を積極的に受け入れてきたオランダの姿勢は理想的であるし、その結果現実として国家運営が難しくなると、制度を変更することによってまた人々が理想的に共生できる形に国を創り上げようとしているオランダは、やっぱりユートピアだなと感じます。

みどり
今回、『オランダ・ミラクル ー人と地域の「力」を信じる高齢者福祉ー』を読んでオランダという国の理解が深まりました。また、オランダの福祉現場の事例紹介も多くてとても勉強になりました。面白く興味深い内容で一気読み出来ました。お勧めです。
読んでくださり有難うございました。

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