『ガウディとサグラダ・ファミリア展』を観に行った感想

昨日、東京国立近代美術館で開催されている『ガウディとサグラダ・ファミリア展』を観に行って来ました。

『ガウディとサグラダ・ファミリア展』は東京では2023年6月13日から2023年9月10日まで開催される予定で、その後は2023年9月30日から2023年12月3日まで滋賀県の佐川美術館で開催され、2023年12月19日から2024年3月10日まで名古屋市美術館で開催される予定です。

今回はその感想を記事にさせていただきます。

みどり
過去にバルセロナに行き、実際にサグラダ・ファミリアやガウディの建築群(カサ・バトリョやグエル公園等)を訪れた際の感想やガウディの生涯についてまとめて記事にさせていただいております。写真を沢山掲載しているので、よろしければ『子連れ旅行、バルセロナのサグラダファミリアについて』『ガウディ作品群(カサ・ミラ、カサ・バトリョ、グエル公園等)について』もご覧ください。
サグラダ・ファミリアの表側の生誕のファサード。
サグラダ・ファミリアの裏側の受難のファサード。
中の柱は放物線状に伸びた木の幹のような柱が支えています。ガウディは森林の木漏れ日の中にいるような明るい空間を創ろうと設計しました。ヨーロッパ各地にあるゴシックの大聖堂の中は暗いけれど、サグラダ・ファミリアの中は白く明るく、ステンドグラスから差し込む光が虹のように内部を明るく照らしていました。
支柱を支える亀。長生きとされる亀は永遠の時を表しています。
万華鏡の中のようにステンドグラスから光が差し込まれ、内部はとても美しかったです。
天井は60mの高さがあり、内部はとても広々とした空間です。ゴテゴテした外側のイメージとは全く異なり、内部はとてもすっきりしていました。
ガウディが設計したグエル公園。自然な岩の質感と人工的に作られた放物線の形が融合して設計されています。
私が一番度肝を抜かれたカサ・バトリョ、通称「骨の家」。正直悪趣味だと思いました。子どもが腰を抜かしていたのが印象に残っています。でも、ガウディの作品を観るなら絶対にカサ・バトリョをお勧めします。ガウディ建築の真骨頂で面白いです。

ガウディとサグラダ・ファミリア展の見どころ

ガウディの創造の源泉、「歴史」「自然」「幾何学」

ガウディは西欧建築の「歴史」や異文化の造形、「自然」が生み出す形の神秘を研究し、そこから独自の形と法則を生み出して独創的な建築物を創造しました。

みどり
スペインはかつてイスラム王朝があり、レコンキスタによってキリスト教文化が浸透してきた歴史があるので、イスラム文化とヨーロッパの文化が混在・融合した建築物があります。また、地中海性気候で温かいので、ヨーロッパにはあまり見られない植物や生き物など独特の自然環境があります。そういったものに着眼してアイディアを得ていたのでしょうね。スペインの歴史については『子連れ旅行、スペインのグラナダのアルハンブラ宮殿の旅について』『スペインアンダルシアの白い村、ネルハとフリヒリアナの旅について』『スペインのコルドバとセビリャの旅について』や『ハプスブルク帝国の歴史とハプスブルク展に行った感想について』もよろしければご覧ください。
スペインの南部アンダルシア地方の街グラナダにある「アルハンブラ宮殿」。イスラム王朝が支配していた頃の建築物が遺っています。スペインにはヨーロッパで唯一イスラム王朝があったというのはとても重要な歴史だと思います。当時のイスラム文化や文明はヨーロッパよりも繁栄していました。
スペイン南部の街コルドバにあるメスキータ(モスク)。放物線のアーチが並んでいます。これもガウディに影響を与えたのだと思います。サグラダ・ファミリアを支える樹状の放物線の柱にどことなく似ています。
イスラム文化が影響した白い街。スペインには白い街が各地にあります。私が訪れたのはフリヒリアナという可愛い白い街です。
アンダルシア地方の街路樹はオレンジ。
レコンキスタは、718年から1492年までに行われた複数のキリスト教国家によるイベリア半島の国土回復運動のことを言います。8世紀にはスペインのほぼ全土をイスラム王朝が支配していましたが、北側からキリスト教国が支配を広げていきました。最後まで残ったイスラム王朝であるナスル朝が1492年にアルハンブラ宮殿の鍵を渡して降伏して、レコンキスタは終了しました。この辺りの歴史が一番好きで、同じ1492年にコロンブスが新大陸発見したという史実に胸が躍ります。
また、ガウディは「建築家の言葉は幾何学」であり、「私は幾何学者」であると主張していました。ガウディは建築史上それまでは未使用だった幾何学の放物線アーチを初期の作品から使い続けました。
みどり
幾何学とは図形や空間の性質について研究する数学の分野のことです。中学校で勉強した三角形の合同の証明や高校で勉強した微積分は幾何学の分野です。確かに、平面を回転させて立体の体積を求めたりする積分は建築に関わりそうだと素人にも想像できます。
みどり
幾何学で思い出したのは、イスラム建築には幾何学模様が用いられていたことです。イスラム教は偶像崇拝を禁止していたので、絵画や彫刻が禁止されていました。そのため、植物文様や幾何学文様、アラビア文字を使用した装飾が発達しました。ガウディはその幾何学模様からも建築のヒントを得ていたのだと思います。
アルハンブラ宮殿の内部の装飾。偶像崇拝が禁止されていたので絵画や彫刻はNGでした。その代わり、幾何学模様のアラベスクが発展しました。
精緻な幾何学模様のタイル。直線や放物線や円や三角形が組み合わせられているのですね。ガウディの建築物にはモザイクのタイルが多く使われているのですが、イスラム建築のタイルと似ている気がします。やっぱりイスラム文化が影響を与えているのでしょうね。
アルハンブラ宮殿の内部の装飾、幾何学模様の漆喰。

サグラダ・ファミリアの建設のプロセス

サグラダ・ファミリアは着工から140年以上建設工事が続いており、2026年に完成予定です。ガウディは模型を修正しながら聖堂の形と構造を探りました。ガウディ没後にプロジェクトを引き継いだ人々の創意工夫についても紹介されています。

ガウディは「創造の原理は自然の法則に従うことだ」と考えました。19世紀のフランスの建築家ヴィオレ=ル=デュクはゴシック建築の合理的構造システムを「構造部材のどれ1つを除去しても崩壊する、なぜなら、釣り合いの法則以外には力学の安定性が得られないからだ」と説明しました。この「釣り合いの法則」はガウディが考える自然の法則の重要な理念になりました。ガウディは自らの建築のトレードマークである放物線アーチのことを「釣り合いの取れたアーチ」と呼びました。
ガウディは糸・鎖の両端を固定して垂らすと下向きの逆アーチを作り、そこに材料の重さを計算したおもりを下げて合理的な形を探る「逆さ吊り実験」という実験方法を考案しました。ガウディはこの実験の結果を鏡に映して上下反転させて、「塔」の建築に応用しました。
みどり
逆さ吊り実験の模型はサグラダ・ファミリアを訪れた際にも見て、一番興味を惹かれました。自然の法則性を最大限に活用していると思いました。
模型には逆さ吊り実験の結果も反映されていると思います。木漏れ日が溢れる森林の中はなぜ明るいのかを追求して、樹状の柱の構造になっています。
サグラダ・ファミリアの模型。逆さ吊り実験の結果が18本の塔の構造に反映されています。
ガウディはアール・ヌーヴォー様式(曲線的で花や植物をモチーフとしたエレガントな装飾が特徴)の建築家の第一人者と言われています。ガウディはカサ・バトリョの為に1907年にこの2人掛けのベンチ(バトリョベンチ)を制作しました。バトリョベンチも今回のサグラダ・ファミリア展で展示されていました。
みどり
19世紀、イギリスで産業革命が起こり、世の中に安価で大量生産されたものが出回ったため、その反動で人々は芸術性や独自性が高いものを求めるようになりました。それで、鉄やガラスなどの当時の新素材を用いて芸術性の高いものを生み出そうとするアールヌーヴォー(Art+新しいの意味のNouveau)という新芸術運動が19世紀末から20世紀初めにかけて起こりました。ベルギーのブリュッセルとフランスのパリはアールヌーヴォーの中心地でした。よろしければ『子連れ旅行、ベルギーの歴史とブリュッセルの旅について』もご覧ください。

 

モザイクで装飾されたの煙突の模型も展示されていました。
私が訪れたグエル邸の煙突。重厚な建物とは似つかず煙突だけ可愛い。
私が訪れたカサ・バトリョの屋上の煙突。しめじのようで可愛い。タイルのモザイク装飾が施されていました。
カサ・ミラの屋上の煙突。屋上は起伏があり、屋上は煙突を見て楽しみながら散策できます。遊び心がありますよね!
カサ・バトリョのモザイクタイル。色がとても綺麗!ガウディといえばモザイクですね。

ガウディの彫刻について

サグラダ・ファミリアは聖書の内容を彫刻で表現されています。その彫刻についての展示もありました。

今回のガウディ展で生誕のファサードにある塑像断片が展示されていました。
私が訪れた際に撮影した生誕のファサードの「マリアの戴冠 」のシーンの塑像。

NHKが撮影した高精細映像やドローン映像による空中散歩

NHKが撮影した高精細製造やドローンが撮影した映像を映し出したシアター展示がありました。

NHKのドローンによる高精細映像、臨場感たっぷりで、とても見ごたえありました!
ドローンによる躍動感のある映像。高い部分も高画質で撮影されていて凄かったです。

まとめ

今回の「ガウディとサグラダ・ファミリア展」は割と混んでいたので、「みんなガウディ好きだなぁ!」と思いました。

私がガウディに興味を持ったのは大学生の時です。出来損ないの法学部生だったので、落とした必修科目の単位取得のために1人で図書館に籠っていたのですが、そこで法律の本に飽き飽きするとガウディの写真集を観て楽しんでいました。

「いつか絶対にグエル邸の天井のプラネタリウムを見たい!」と思っていたら、念願叶って30代でガウディの作品群を観ることが出来ました。実際に観て一番衝撃を受けたのはカサ・バトリョで、実際に観てみると「ガウディの作品は面白いけど奇抜すぎる!」という印象を抱きました。それでも、サグラダ・ファミリアの内部の美しさには心から感動しました。

サグラダ・ファミリアの柱は自然法則に従った合理的なものであり、放物線アーチで樹状の形状が用いられています。サグラダ・ファミリアを訪れた時に逆さ吊り実験の発想がとても面白いと思ったので、今回の展覧会でその模型をまた見ることが出来て満足しました。

NHKが撮影した高精細のシアターはとても迫力があり、実際にサグラダ・ファミリアにいるような臨場感を味わうことが出来ました。

ぜひ、ご興味があれば訪れてみてください。

読んでくださり有難うございました。

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