先日、私は2023年10月17日~2024年1月21日までSOMPO美術館で開催されている『ゴッホと静物画ー伝統から革新へ』展へ行ってきました。
私は2013年12月から2016年3月までオランダのアムステルダムに住んでいました。その頃、私は何度もゴッホ美術館に通い、ゴッホの絵を観ているうちにゴッホが大好きになりました。
ゴッホの絵はたくさん好きな絵があるのですが、私が一番大好きなのは『アイリス』です。ゴッホ美術館で買ったアイリスのパネルは今も部屋の壁に飾っています。
そのゴッホの『アイリス』がアムステルダムから日本にやってきている!嬉しい再会でした♡今回はSOMPO美術館で開催されていたゴッホ展2023の感想についてです。
静物画について
17世紀のオランダは当時のヨーロッパにおいて最初の市民社会が築かれており、その市民の趣味や嗜好に沿った絵が求められました。また、オランダの信仰はプロテスタントで、神の言葉(聖書)を知ることを第一義とし(聖書主義)、カトリック諸国のように絵画、彫刻で教会を飾ることには消極的で、概して宗教美術に関心が薄く、その分、市民は肖像、風景、静物などの世俗的なジャンルに関心が向いていました。
アカデミズムでは神々や人間の営みを描いた歴史画が高尚な分野とみなされ、静物画は下位に位置付けられていました。しかし、主に17世紀の大航海時代に端を発する植物学への関心や園芸品種の開発は花の静物画の発展につながりました。
カトリックの総本山の
バチカンはミケランジェロやラファエッロの絵画や彫刻で豪華絢爛に飾られていました。オランダは16世紀後半にカトリックのハプスブルクから独立したプロテスタントの国です。(オランダの歴史については、よろしければ『
子連れ旅行、ベルギーの歴史とブリュッセルの旅について』もご覧ください。)その歴史的経緯もあって、市民社会が形成されていたオランダでは宗教画ではなく肖像や風景、静物画などの世俗的なジャンルが形成されていったのですね。
ルネサンス時代にその萌芽が見られた静物画の黄金時代は17世紀で、特にオランダでは多くの画家が花や食卓、そして『ヴァニタス』などの静物画を描きました。
『ヴァニタス』とは16世紀から17世紀にかけてフランドルやネーデルラントなどヨーロッパ北部で特に多く描かれた静物画のジャンルで、豊かさを意味する様々な静物の中に人間の死を意味する頭蓋骨や時計、パイプ、腐っていく果実などを置き、観る者に対して虚栄の儚さを喚起する意図をもって描かれました。バチカンのような豪華絢爛を嫌い、質実剛健を好むオランダ人の根底にある死生観を感じますね。
ゴッホの静物画
ゴッホは27歳から37歳までの10年という短い画業の中で、油彩だけでも850点余りを描きました。そのうち最も多いのは風景画で400点近くあり、その次が人物(肖像)で250点あり、静物画については約180点あります。ゴッホが花の静物画を本格的に描き始めたのは画家を志してから6年後のことです。
ゴッホの生涯についてはよろしければ『
ゴッホ美術館とクレラー=ミュラー美術館についてとゴッホ展2021の感想』もご覧ください。画家を志してからの6年間のオランダ時代は、農民画家のミレーに私淑していたゴッホは自らも「農民画家」を宣言し、身近な農民や労働者をモデルとした人物や静物、農村風景を独学で描いていました。私はオランダ時代の黒いけれど温かみのある作品も好きで、『Potato Eaters』の絵が大好きです。
人物を描く画家を目指したゴッホにとって静物画、特に花の静物画は、絵画の技法を習得し、色やタッチを研究するためのものだったのかもしれません。ゴッホはこの「静物画」という「修行」を通して自らの芸術を確立し、やがてそれは『ひまわり』という「花の静物画」に結実しました。
今回のゴッホ展で観た静物画
今回のゴッホ展では、『ひまわり』や『アイリス』などの25点のゴッホの作品が集結していました。また、ゴッホ以外にもピサロやルノワール、モネ、セザンヌ、ゴーギャンなどの静物画も展示されていて、美しい花の静物画など69点の静物画を鑑賞することが出来ました。
オランダでは昔からニシンがよく食べられていたのですね。私はオランダ名物「ハーリング」をよく食べていました。
ルノワールの『ばら』は優雅で美しいですね!こんな素敵な作品が
国立西洋美術館の常設展にあるのですね。国立西洋美術館には松方幸次郎が収集した西洋絵画の傑作が沢山あります。以前、
松方コレクション展も観にいきました。日本の発展のために西洋絵画を集めてくださった松方幸次郎の生き方は素晴らしいと思います。国立西洋美術館の常設展は
原則第2日曜日は無料で観覧できます。ゴッホやルノワールなどの作品が沢山収められているので、よろしければ足を運んでみてください。
まとめ
今回のゴッホ展ではゴッホやルノワール、ゴーギャンなど様々な画家が描いた花の静物画を沢山観ることが出来てとても優雅な気持ちになれました。
そして、私が一番大好きな『アイリス』を観ることが出来て心が生き返りました。やっぱりどんな時も好きなものがあるということは強みなのだと感じました。アムステルダムのゴッホ美術館で一番好きだった『アイリス』に日本でまた出会うことが出来て、一期一会も感じました。隣に並んでいた『ひまわり』の絵も『アイリス』をお迎え出来て幸せだったことでしょう。『アイリス』の背景の黄金の黄色が輝いて見えました。
花の国オランダには世界最大の花市場「アールスメール花市場」があり、日常的に花を隣人に贈り合ったり窓辺に花を飾って道行く人の目を楽しまる習慣があります。私もオランダに住んでいた頃は花が安かったので、沢山の花を花瓶に飾って楽しんでいました。早春にアマリリスの大きな球根から芽が出てくる様子を毎日観察していたのが懐かしいです。
読んでくださり有難うございました。
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